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研究と報告
抗うつ薬による治療中に躁症状を呈した気分障害の臨床的検討
著者: 新屋美芳12 鈴木克治13 田中輝明1 増井拓哉1 高丸勇司2 小山司1
所属機関: 1北海道大学大学院医学研究科神経機能学講座精神医学分野 2市立小樽第二病院精神科神経科 3米国国立精神保健研究所
ページ範囲:P.849 - P.856
文献購入ページに移動単極性うつ病として抗うつ薬による治療中に,DSM-IVに基づく軽躁病あるいは躁病エピソードの基準を満たしたことがある症例のうち,その後の経過で抗うつ薬使用中以外には躁転経験のない(「うつ病性障害群」と定義)11例と,自然躁転を経験した「双極性障害群」13例の臨床的特徴を比較した。
抗うつ薬への感受性や躁病エピソードの症状項目の数に有意な差が認められた。抗うつ薬使用中の躁転に関して,当該うつ病相に対し最後に使用した抗うつ薬を開始してから61日以上経過して躁転し,かつDSM-IVの躁病エピソード基準Bの症状項目を4項目以上満たす場合,誤判定率1.1%で双極性障害の診断が可能と計算された。また,抗うつ薬使用中の躁転では自然躁転に比較して注意散漫が目立たなかった。
今回の検討結果は,遡及的調査の限界はあるものの,抗うつ薬誘発性の躁病相に対して客観的な臨床指標により診断を確定できる可能性を示唆している。これらの指標により,治療の方向づけが早期になされ,的確な治療につながることが期待される。
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