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雑誌詳細

文献概要

私のカルテから

統合失調症に対する障害年金給付初診日主義への挑戦

著者: 森山成あきら1

所属機関: 1通谷メンタルクリニック

ページ範囲:P.915 - P.917

はじめに

 2003年3月,筆者は第23回日本社会精神医学会で『統合失調症に対する障害年金給付初診日主義の問題点』と題する一般演題発表をした。ここでいう初診日主義というのは,障害年金の支給認定が発症日ではなく医療機関の初診日に左右されていることを指している。発表の中で対比させたのは,同じく20代後半の青年であり,一方は20歳9か月,他方は20歳2か月で精神科クリニックを初診していた。双方とも20歳以降精神科受診まで保険料を払っておらず,前者は17歳時に胃潰瘍と自律神経失調症(心身症)で内科医院を受診し,後者は19歳時,帯状疱疹で皮膚科を訪れていた。前者では内科受診,後者では皮膚科受診を統合失調症の初診日として,再申請をしたところ,前者では障害2級の判定が下り,無拠出年金からの支給が決まった。しかし後者では不支給の決定がなされ,本人と家族はこれを不服として再審査を請求したがこれも棄却され,ついに裁判に訴えた。2年にわたる裁判の結果,2005年11月1日福岡地裁は原告の主張を認め,20歳前の発症を確認して,不支給処分は違法だとの判断を下した。2週間たっても国と社会保険庁は控訴せず,この判決が確定した。

 臨床医にとってこの事実を知っておくことは,患者の経済的基盤を支えるうえでも有意義であり,当事者の承諾を得て,以下に一連の経過を報告する。

参考文献

1) 金澤彰:年金受給中の精神障害者の疫学的検討.愛媛医学 3:287-294,1984
2) 金澤彰,岡田謙:年金受給中の精神障害者の生活.愛媛医学 3:295-300,1984
3) 金澤彰:精神障害者の年金受給の現状と申請上の留意点.愛媛医学 4:320-323,1985
4) 金澤彰,倉山茂樹,和気現人,他:障害年金を受給していない精神障害者の実状.愛媛医学 9:284-288,1990
5) 金澤彰,塩田一雄:精神障害者に対する障害年金への理解と期待.精神保健指定医の回答を中心に.愛媛医学 9:289-293,1990
6) 金澤彰:精神障害者に対する年金制度の問題点と改善の方策-認定審査員へのアンケートから.社精医 14:165-171,1991
7) 金澤彰:障害年金受給から見た精神障害の概念.精神経誌 96:715-723,1994
8) 山本宙,柳田諭,野村陽平,他:統合失調症患者の障害年金.精神医学 47:913-919,2005

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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