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文献詳細

雑誌文献

精神医学48巻8号

2006年08月発行

「精神医学」への手紙

SSRIによる性機能障害について―「抗うつ薬の功罪―SSRI論争と訴訟」を読んで

著者: 井貫正彦12

所属機関: 1君津中央病院精神科 2木更津病院

ページ範囲:P.922 - P.924

文献概要

 本誌2006年2月号の書評に紹介されたこの本は,SSRIにより自殺のリスクが増加するという副作用が黙殺され,その後訴訟に発展した薬害事件の経緯を詳述している。以前,厚生省(現厚生労働省)に勤務していたとき,薬害エイズ事件を経験した筆者にとって,震撼とさせる非常にショッキングな内容であった。筆者もまた,書評者同様,著者,監修者,訳者の勇気に拍手を送りたい。これに触発され,筆者はparoxetineによる性機能障害について取り上げたいと考えた。後述する通り,決して頻度は低くはなく,深刻な副作用であると考えられるにもかかわらず,日本ではあまり注目されず,製薬企業は添付文書で十分な注意喚起を行っていないのみならず,この副作用に対する製薬企業の対応には理解に苦しむ点があるからだ。

 筆者は,挙児希望を契機に,paroxetineによる射精遅延に気づいた,パニック障害の30歳代男性患者の症例を経験した。本症例ではparoxetine 20mg/日を使用していたが,射精遅延に気づいたためfluvoxamine 50mg/日に置換したところ,速やかに症状は消失した。

参考文献

1) 加藤聡彦,永尾光一,原啓,他:塩酸パロキセチンによる射精障害.日本性機能学会雑誌18:7-10,2003
2) 越田竹朗,宮島哲,堀口裕,他:早漏に対する選択的セロトニン再取り込み阻害剤の使用経験.日本性機能学会雑誌 19:65,2004
3) Montejo AL, Llorca G, Izaquierdo JA, et al:Incidence of sexual dysfunction associated with antidepressant agents:A prospective multicenter study of 1022 outpatients. J Clin Psychiatry 62:10-21, 2001
4) 望月眞弓:医療用医薬品添付文書(効能書)と医薬品安全性情報.臨精医 34(増刊号):107-114,2005
5) 永尾光一,小林秀行:射精のタイミングの障害 早漏.日本臨床 60(増刊号6):521-525,2002
6) 永尾光一,三浦一陽,石井延久:性機能障害.クリニカ 30:59-63,2003
7) 2004年度国内医療用医薬品ランキング.Monthlyミクス(2005年増刊号):48-50,2005
8) Waldinger MD, Hengeveld MW, Zwinderman AH, et al:Effect of SSRI antidepressants on ejaculations. A double-blind, randomized, placebo-controlled study with fluoxetine, fluvoxamine, paroxetine, and sertraline. J Clin Psychopharmacol 18:274-281, 1998

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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