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文献詳細

雑誌文献

精神医学49巻11号

2007年11月発行

文献概要

研究と報告

セルフモニタリングシステムを用いた統合失調症患者の体重管理と気質・性格特性の関連

著者: 松尾寿栄1 安部博史1 長友慶子1 米良誠剛2 倉山茂樹2 石田康1

所属機関: 1宮崎大学医学部臨床神経科学講座精神医学分野 2宮崎若久病院

ページ範囲:P.1103 - P.1110

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抄録

 本研究では統合失調症患者を対象に,①日々の体重の自己記入や面接が,食行動に関する認知の改善や体重の維持または減少をもたらすのか,②統合失調症患者における体重変化に特定の気質・性格特性が関与しているのかについて調べた。対象患者の気質・性格検査としてTemperament and Character Inventory(TCI)を施行した他,簡易精神症状評価尺度(Brief Psychiatric Rating Scale;BPRS),日本版WAIS-R成人知能検査,肥満症患者の行動療法のために作成されたグラフ化体重日記および食行動質問票を使用した。導入時と16週間後の体重を比較したところ,平均1.1±3.1(平均±標準偏差)kg減少していた。食行動質問票では「食べ方」や「食事内容」に関する項目で有意に改善が認められた。統合失調症患者において,日々の体重の自己記入や面接が,食行動に関する認知を改善することにより体重の維持または減少をもたらしていると考えられた。また,体重の増減と気質・性格特性の相関分析では,体重の増加と「新奇性追求」特性に正の相関傾向(r=0.49)が,「損害回避」特性とは有意な負の相関(r=-0.65)が認められた。統合失調症患者においては,「新奇性追求」や「損害回避」の気質・性格特性に視点を置いた認知行動療法的アプローチが適切な体重管理に有効である可能性が示唆された。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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