文献詳細
短報
前頭側頭型認知症にパーキンソン症候群を合併した1例
著者: 長谷川浩1 朝倉幹雄1 中野三穂2 長田賢一2 山口登2
所属機関: 1聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院神経精神科 2聖マリアンナ医科大学神経精神科
ページ範囲:P.1129 - P.1132
文献概要
前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia;FTD)は,Pick病を含む疾患群であり,Alzheimer病(Alzheimer's disease;AD),Lewy小体型認知症(dementia with Lewy bodies;DLB)に次いで3番目に多い変性性認知症である1)。FTDの病変は前頭葉から側頭葉前方部に限局しており,それに由来する人格,行動変化を主徴とする。その行動変化として,無関心でわが道を行く行動(going my way behavior)が特徴的であり,その結果反社会的行動,常同行為(時刻表的生活)が認められる11)。FTDでは身体症状を伴わないことが多いが,一部ではパーキンソン症候群や運動ニューロン障害を伴う症例もある5)。行動変化に対する対症療法には非定型抗精神病薬やセロトニン作動性の抗うつ薬が有効との報告があるが7),パーキンソン症候群を合併した場合には抗パーキンソン病薬の副作用(幻覚妄想状態)への対応も考慮しなければならず,薬物療法に苦渋することになる。
今回我々は,FTDの行動異常に対する薬物療法を開始したが,途中からパーキンソン症候群を合併して,両者の対応に苦渋しながらもバランスが取れた薬物療法を行い,在宅介護が可能となった1例を報告する。なお,保険適応外使用である薬剤においては,患者および家族の同意を得て使用している。
参考文献
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