icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学49巻11号

2007年11月発行

文献概要

紹介

ECTにおける発作評価と「治療閾値」の重要性―米国のVisiting Fellowshipに参加して

著者: 上田諭12

所属機関: 1日本医科大学精神医学教室 2東京都老人医療センター精神科

ページ範囲:P.1135 - P.1141

文献購入ページに移動
はじめに

 うつ病の治療を中心として電気けいれん療法(ECT)への注目が高まっているが,日本のECTはいまだ発展途上といってよい。欧米では,いわゆる修正型,つまり麻酔薬と筋弛緩薬を使用した無けいれんでの施行が30年前から一般的となっているのに対し,日本では非修正型(有けいれん)がいまだ少なからず残存している。また,治療器についても欧米から20年以上遅れて2002年に,認知面や心循環系に対しより安全な短パルス矩形波(以下,パルス波と略)治療器が承認されたが,すでに製造中止となったサイン波治療器もなお使用されている。さらには,ECTの増加に伴い,その適応の甘さを指摘する声も聞かれる4)

 筆者はこの5年間,勤務した高齢者専門総合病院で年間約500セッションのECTを経験してきた。その中で,現在の自分たちの方法や考え方が最も有効なものであるのか,高齢者に対してサイン波を使わずにパルス波のみで十分な効果を得る方法はないか,と考えてきた。そこで本年3月,米国のECTの実際を見るため,米国ノースカロライナ州Duke University Medical Center(DUMC)のVisiting Fellowship in ECTに参加し,5日間の研修を受けた。研修は大変有意義なものであった。なかでも,十分な認識を持てなかった刺激電気量と発作持続時間の関係および発作の評価について確かな知見を得たので,それを中心に報告したい。なお,DUMCの担当教授は,邦訳がある「ECT実践ガイド」15)の著者,米国精神医学会(APA)ECT委員会chairpersonを務めたWeinerで,米国におけるECTの第一人者である。

参考文献

1) Abrams R:Electroconvulsive Therapy, 4th ed. Oxford University Press, New York, 2002(一瀬邦弘,本橋伸高,中村満 監訳: 電気けいれん療法.へるす出版,2005)
2) 新垣浩,本橋伸高:電気けいれん療法(electroconvulsive therapy;ECT).精神医学 48:1355-1362,2006
3) Beyer JL, Weiner RD, Glenn MD:Electroconvulsive Therapy, A programmed text, 2nd ed. American Psychiatric Press, London, 1998
4) 土井永史:ECTの適応となる病態―その現状と展望.日本総合病院精神医学会電気けいれん療法講習会資料,2006
5) Fink M, Taylor MA:Catatonia:A Clinician's Guide to Diagnosis and Treatment. Cambridge University Press, Cambridge, 2003(鈴木一正 訳:カタトニア―臨床医のための診断・治療ガイド.星和書店,2007)
6) 今宿康彦,千田真典,松原桃代,他:パルス波電気けいれん療法におけるpropofol濃度とけいれん時間.精神医学 49:429-431,2007
7) Krystal AD, Watts BV, Weiner RD, et al:The use of flumazenil in the anxious and benzodiazepine-dependent ECT patient. J ECT 14:5-14, 1998
8) 黒田裕子,本橋伸高:短パルス矩形波治療器使用の実際.精神科治療学 18:1375-1380,2003
9) 三澤仁,加藤温:パルス波ECT無効例の検討.臨精医 35:1297-1300,2006
10) 中村満:電気けいれん療法の実践―基礎編:適応と実際の手技について.日本総合病院精神医学会電気けいれん療法講習会資料,2006
11) 大久保善朗,本橋伸高,粟田主一,他:電気けいれん療法(ECT)をめぐって(座談会).臨精医 35:1163-1180,2006
12) 櫻井高太郎,立花義浩,堀口憲一,他:ECTにおける発作モニタリングの有用性.精神科治療学 19:369-374,2004
13) 鈴木一正:パルス波治療器による電気けいれん療法(ECT)では適切な刺激電気量の設定が必要―小林聡幸,西田慎吾,西嶋康一,他:パルス波が無効でサイン波による通電療法が著効したうつ病の1例.精神科治療学 19:905-910,2004.に対して―.精神科治療学 19:1491-1492, 2004
14) 竹内賢,小林直人,増子博文,他:電気けいれん療法時における発作持続時間の予測の試み.精神科治療学 19:1115-1120,2004
15) Weiner RD, American Psychiatric Association Committee on Electroconvulsive Therapy:The Practice of electroconvulsive therapy:Recommendation for treatment, training, and privileging(A Task Force Report of the American Psychiatric Association), 2nd ed., American Psychiatric Association, Washington D.C., 2001(日本精神神経学会電気けいれん療法の手技と適応基準の検討小委員会 監訳:米国精神医学会タスクフォースレポートECT実践ガイド.医学書院,2002)
16) 安田和幸,小林薫,北原裕一,他:電気けいれん療法中の静脈麻酔薬の選択について―3症例を通じて.臨精医 35:1301-1307,2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら