icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学49巻2号

2007年02月発行

研究と報告

初発および再発統合失調症の急性期入院症例におけるクライエント・パス(患者による治療経過評価)を利用した治療経過の特徴

著者: 渡部和成1

所属機関: 1八事病院

ページ範囲:P.161 - P.169

文献概要

抄録

 クライエント・パス(患者による治療経過評価)を用いた初発および再発統合失調症入院患者の急性期治療の結果を比較検討した。入院時BPRSが高い初発群のほうが入院期間は短かった。初発群ではパスの開始は遅い傾向があったが初期と回復前期の終了は再発群より早かった。各期での症状評価の改善度は両群で同様であった。患者心理教育への参加度は,初発群で初期と回復前期において再発群より高い傾向があった。以上より,初発群では入院時に重症であっても慎重にパスに導入すると早期の症状改善と治療に対する主体性の獲得を期待できる一方,再発群では早くパスを開始できるが抑うつ・不安症状が強く患者心理教育への主体的な参加が不十分であり長い入院になるように思われた。本研究の結果から,再発入院患者の治療では,患者に統合失調症治療への理解と主体性をよりいっそう高めることを促し,安心して治療に取り組めるようにサポートしていくことが重要であると思われた。

参考文献

1) Amenson CS 著,松島義博,荒井良直 訳:家族のための精神分裂病入門.星和書店,2001
2) 安西信雄:患者本人への心理教育―認知行動療法の応用可能性.臨精医 30:517-521,2001
3) Chadwick J, Birchwood M:The omnipotence of voices:A cognitive approach to auditory hallucination. Br J Psychiatry 165:190-201, 1994
4) 井口喬,波木井恵子:烏山病院におけるクリニカルパス.Psychiatrist 6:22-37,2005
5) 稲垣中,稲田俊也,藤井康男,他:向精神薬の等価換算.星和書店,1999
6) 石野徳子:精神科病院でのクリニカルパス 作成・導入における多職種チーム構成,そして医師の参画の重要性.Psychiatrist 6:75-84,2005
7) 伊藤弘人:精神医学とクリニカルパス.精神医学 47:6-18,2005
8) Overall JE, Gorham DR:The Brief Psychiatric Rating Scale(BPRS):Recent developments in ascertainment and scaling. Psychopharmacol Bull 24:97-99, 1988
9) 渡部和成:患者・家族心理教育は統合失調症の長期予後を良好にする Ⅰ.ビデオを利用した認知集団精神療法の統合失調症治療における効果.臨精薬理 7:1341-1353,2004
10) 渡部和成:患者・家族心理教育は統合失調症の長期予後を良好にする Ⅱ.家族心理教育の統合失調症治療における効果.臨精薬理 7:1355-1365,2004
11) 渡部和成:患者・家族心理教育は統合失調症の長期予後を良好にする Ⅲ.Risperidoneは患者心理教育の効果を増強する.臨精薬理 7:1367-1377,2004
12) 渡部和成:薬物療法と患者・家族心理教育からなる統合的治療が功を奏した統合失調症の一例.精神科治療学 20:175-182,2005
13) 渡部和成:医療現場において統合失調症の薬物療法を考えるとき.メディカル,コメディカルの協力関係のありかた.臨精薬理 8:1921-1928,2005
14) 渡部和成:新しい統合失調症治療―患者と家族が主体のこころの医療.アルタ出版,2006
15) 渡部和成,田村明子:統合失調症治療におけるクライエント・パスの試み.精神経誌 2006特別号:S109,2006
16) 山崎勉:クリニカルパスと記録の展開例―急性期対応病棟の事例から.精神科看護 28:14-22,2001

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら