文献詳細
短報
記憶障害を訴え続ける心気症(mnestic hypochondria)の1例
著者: 村田佳江1 仲秋秀太郎12 早野順一郎3
所属機関: 1名古屋市立大学大学院医学研究科 精神・認知・行動医学 2八事病院 3名古屋市立大学大学院医学研究科 臨床病態内科学
ページ範囲:P.171 - P.174
文献概要
心気症とは,医学的な検査所見では異常がないにもかかわらず,自分が重篤な病気ではないかと疑い,執拗に再検査を要求することが多い疾患である1)。患者がこだわる症状は,頭痛や耳鳴り,しびれなどさまざまである。BerriosとHodges2)は,ケンブリッジにおけるメモリークリニックの患者データに基づき,神経心理学的な検査異常を認めないにもかかわらず,記憶障害を強く訴え続ける患者群を,心気症の一つととらえ,健忘症状を訴える心気症(mnestic hypochondria)という概念を提唱した。このような症例は,物忘れ外来などで少なからず遭遇すると思われるが,心気症の症例としての報告は,我々の知る限り,まだ十分に報告されていない。
今回,検査結果に異常がないにもかかわらず,長年にわたり記憶力が悪いと訴え続けた症例を経験した。BerriosとHodges2)の提唱する心気的な健忘症状の1例と考えられたので報告する。なお,本報告にあたっては患者本人からの書面による同意を得ている。
参考文献
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