文献詳細
短報
右前頭葉眼窩面損傷後に多彩な精神症状を呈した1例
著者: 吉見明香1 都甲崇1 中村慎一1 浅見剛1 中川牧子1 六本木知秀1 塩崎一昌1 平安良雄1
所属機関: 1横浜市立大学医学部精神医学教室
ページ範囲:P.179 - P.182
文献概要
器質的な脳障害後に精神症状が出現することは少なくなく,その内容は多岐にわたる。古くは情動障害として,Schneider9)により記述され,その後さまざまな研究者により情動障害の概念で報告されてきた。近年では,DSM-III-Rによる記述がなされ,Koponenら5)によれば,外傷性脳損傷の既往を持つ60例の30年間の経過中,約60%の症例でAxis 1に該当する精神障害が認められたとされている。また,他の多くの疫学調査によっても,頭部外傷の既往を有する場合には,その後精神疾患を発症する可能性が高いことが示されている。しかしながらその症状や経過はさまざまであり,損傷部位と精神症状との関連についても不明な点が多い。
今回我々は,12歳時の交通外傷による前頭葉眼窩面損傷後,経時的にさまざまな精神症状を呈した1例を経験したので,前頭葉損傷と精神症状の関連について考察を加えて報告する。
参考文献
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