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文献詳細

雑誌文献

精神医学49巻2号

2007年02月発行

短報

右前頭葉眼窩面損傷後に多彩な精神症状を呈した1例

著者: 吉見明香1 都甲崇1 中村慎一1 浅見剛1 中川牧子1 六本木知秀1 塩崎一昌1 平安良雄1

所属機関: 1横浜市立大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.179 - P.182

文献概要

はじめに

 器質的な脳障害後に精神症状が出現することは少なくなく,その内容は多岐にわたる。古くは情動障害として,Schneider9)により記述され,その後さまざまな研究者により情動障害の概念で報告されてきた。近年では,DSM-III-Rによる記述がなされ,Koponenら5)によれば,外傷性脳損傷の既往を持つ60例の30年間の経過中,約60%の症例でAxis 1に該当する精神障害が認められたとされている。また,他の多くの疫学調査によっても,頭部外傷の既往を有する場合には,その後精神疾患を発症する可能性が高いことが示されている。しかしながらその症状や経過はさまざまであり,損傷部位と精神症状との関連についても不明な点が多い。

 今回我々は,12歳時の交通外傷による前頭葉眼窩面損傷後,経時的にさまざまな精神症状を呈した1例を経験したので,前頭葉損傷と精神症状の関連について考察を加えて報告する。

参考文献

1) Fujii D, Iqbal A:Characteristic of psychotic disorder due to traumatic brain injury:An analysis of case studies in the literature. J Neuropsychiatry Clin Neurosci 14:130-140, 2002
2) Harlow JM:Recovery from the passage of an bar through the head. Publ Mass Med Soc Boston 2:327-346, 1868
3) 林竜一郎,渡辺良,三村將,他:地理的定位錯誤,人物錯誤,空想作話を呈したもやもや病の1例.脳と神経 52:1091-1096,2000
4) 鹿島晴雄,村松太郎:前頭葉眼窩面損傷―情動障害と人格変化.Clin Neurosci 17:786-788,1999
5) Koponen S, Taiminen T, Portin R, et al:Axis I and II psychiatric disorders after traumatic brain injury:A 30-year follow-up study. Am J Psychiatry 159:1315-1321, 2002
6) Logue V, Durward M, Pratt RTC, et al:The quality of survival after rupture of an anterior cerebral aneurysm. Br J Psychiatly 14:137-160, 1968
7) 大東祥孝:頭部外傷.松下正明 編.臨床精神医学講座 10 器質・症状性精神障害.中山書店,pp385-406,1997
8) 大東祥孝:頭部葉関連症状.Clin Neurosci 10:75-77,1992
9) Schneider K:Psychosen nach Kopfverletzungen. Nervenarzt 8:567-573, 1935

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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