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文献詳細

雑誌文献

精神医学49巻2号

2007年02月発行

文献概要

短報

4-acetoxy-N-methyl-N-isopropyltryptamine(4-AcO-MIPT)過量服薬により知覚変容,幻視,意識障害,脱抑制を呈して高所からの飛び降りに至った1症例

著者: 安藤英祐1 市村篤1 矢野広1 大屋彰利1 煙石洋一1 山際武志2 猪股誠司1 遠藤由貴1 大西雄一1 尾形和生1 猪口貞樹2 松本英夫1

所属機関: 1東海大学医学部専門診療学系精神科学 2東海大学医学部専門診療学系救命救急医学

ページ範囲:P.189 - P.192

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はじめに

 近年,本邦では脱法ドラッグと称される薬物が流通し,これらの使用による急性薬物中毒の症例が報告されている1,6,11)。脱法ドラッグはインターネットなどで容易に購入できるようになっており10),薬事法の改正や東京都の条例の適用により規制の対象薬物に指定されると,その薬物の化学構造式に類似した物質が製造,販売されるためその乱用は後を絶たない7,9)。有名なものに5-methoxy-N,N-diisopropyltryptamine(5-MeO-DIPT,通称「ディプト」「ゴメオ」)が挙げられるが,2005年4月17日以降は麻薬に指定され,次に販売された5-methoxy-N-methyl-N-isopropyltryptamine(5-MeO-IPT,通称「ミプト」)も2005年6月1日以降は東京都の知事指定薬物に指定され取り締まりの対象になった11)。今回我々は5-MeO-IPTの化学構造式を変えた4-acetoxy-N-methyl-N-isopropyltryptamine(4-AcO-MIPT,通称「ラビリンス」)を過量服薬して知覚変容,幻視,意識障害,脱抑制を呈し,その結果として高所からの飛び降りに至った1症例を経験したので報告する。なお報告にあたって口頭にて本人の同意を得た。また,科学的考察のために支障のない範囲でプライバシー保護のために症例の内容を変更した。

参考文献

1) 安藤英祐,市村篤,大塚洋幸,他:5-methoxy-N-methyl-N-isopropyltryptamine(5-MeO-IPT)摂取により視覚過敏,聴覚過敏を呈した1症例.精神医学 47:1255-1257,2005
2) Drug Enforcement Administration:Notice of Intent to Place alpha-Methyltryptamine and 5-Methoxy-N, N-diisopropyltrypyamine into Schedule I. Microgram Bulletin 2003, pp41-43, 2003
3) 挟間秀文,川原隆造:新benzodiazepine製剤(triazolam)による短期記憶の障害.精神医学 23:361-365,1981
4) Meatherall R, Sharma P:Foxy, a Designer Trypytamine Hallucinogen. J Anal Toxicol 27:313-317, 2003
5) 森川恵一,松原六郎:Brotizolam投与後出現した健忘を主症状とする異常行動の2症例.精神医学 34:265-268,1992
6) 清田和也:急性中毒症例―5-MeO-DIPTおよびGHB前駆物質について.中毒研究 17:259-266,2004
7) 関田清司,井上達:薬物乱用と「合法ドラッグ」.J Toxicol Sci 24:147-158,1999
8) Shulgin A, Shulgin A:TiHKAL, the continuation. TRANSFORM PRESS, Berkeley, pp481-484, 1997
9) 竹村道夫:合法ドラッグについて.精神科 2:246-250,2003
10) 植木眞琴:薬物の不正使用.臨床病理 50:151-155,2002
11) 山本理絵,安藤英祐,飯塚進一,他:2,5-demethoxy-4-iodophenethylamine(2C-I)摂取により,知覚変容,聴覚過敏,錯視,横紋筋融解症を呈した1例.精神医学 48:1225-1227,2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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