icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学49巻2号

2007年02月発行

文献概要

「精神医学」への手紙

神経内科医からみたCabergolineの安全性について

著者: 檜垣雄治1

所属機関: 1安来第一病院神経内科

ページ範囲:P.217 - P.217

文献購入ページに移動
 2006年11月号(精神医学 48:1177-1182,2006)におきまして,田中先生らの論文「双極性うつ病に対するcabergolineの効果および安全性に関する後方視的検討」を興味深く読まさせていただきました。その中でcabergoline(以下CBGと略す)は双極性うつ病に対して有効かつ安全であると記述されておりますが,最近神経内科医の間ではCBGを含めた麦角系アルカロイドのドパミン刺激薬に心臓弁膜症を発生させる副作用があることが知られるようになってきました。ドパミン刺激薬と心臓弁膜症との関連については,2002年ブロモクリプチンによる心臓弁膜症の報告が初めてですが,特に2004年のペルゴリド高用量投与と心臓弁膜症の関連を示唆したVan Campら2)の報告により広く知られるようになりました。また,2005年にPineroら1)はCBGを内服投与されたパーキンソン病患者に重症の僧帽弁閉鎖不全症を呈し,手術で摘出された僧帽弁の病理所見では腱索周囲に著明な線維芽細胞増殖を認め,これにより弁が硬くなり重症弁膜症を来した1例報告を行いました。実際小生も2006年6月にCBGを維持量(2mg/日)で4年8か月投与していた82歳男性が,重症僧帽弁閉鎖不全症になり(もちろんCBG投与前に心エコーにて弁膜症がないことを確認しておりました),他院にて弁置換術を受けられ,心エコー検査,病理検査の結果,CBG起因性拘束性僧帽弁閉鎖不全症と結論づけられた症例を経験しております。麦角系ドパミン刺激薬による心臓弁膜症の機序として現在最も注目されているのは,麦角系ドパミン刺激薬の5-HT2B受容体に対する高い親和性であると言われております。5-HT2B受容体は心臓弁膜に多く発現し,刺激により線維芽細胞にmitogenesisを誘導することが知られております。このことから,ペルゴリドおよびCBGは,5-HT2B受容体刺激を介して心臓弁膜症を惹起する可能性が示唆されております。

 上記のようにCBGは重症の心臓弁膜症を来す可能性のある薬剤であり,決して安全性の高い薬剤というわけではないということを神経内科医の立場から意見を述べさせていただきました。

参考文献

1) Pinero A, Marcos-Alberca P, Fortes J:Cabergoline-related severe restrictive mitral regurgitation. N Engl J Med 353:1976-1977, 2005
2) Van Camp G, Flamez A, Cosyns B, et al:Treatment of Parkinson's disease with pergolide and relation to restrictive valvular heart disease. Lancet 363:1179-1183, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?