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文献詳細

雑誌文献

精神医学49巻3号

2007年03月発行

文献概要

研究と報告

インターネットを用いた精神障害の動向調査

著者: 矢作千春1 太刀川弘和2 谷向知3 根本清貴4 遠藤剛4 芦澤裕子4 田中耕平4 石井竜介4 石井徳恵4 橋本幸紀4 水上勝義3 朝田隆3

所属機関: 1筑波大学大学院医科学研究科精神医学教室 2茨城県精神保健福祉センター 3筑波大学大学院人間総合科学研究科精神病態医学 4筑波大学附属病院精神神経科

ページ範囲:P.301 - P.309

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抄録

 未受診の潜在的な精神医学的症候群を有する人々の動向を把握する一助として,インターネット上に研究用ウェブサイトを開設し,訪問者に対して精神障害や精神医療に関するアンケート調査を施行した。対象の33,590件中,自覚的なうつと不安の訴えが8割に認められた。精神科受診が望まれる重症群と思われる人の中で,現在治療中の者は1割で,半数近くが未受診であった。受診に至らない理由として,「精神科への抵抗感」や,「精神科病院に関する情報不足」などが挙げられた。

 今回の調査は,訪問者の基礎的属性の偏りや信頼性・妥当性の課題が残るものの,多数の未受診の精神障害の存在を見いだしたと考えられる。今後はこうした一群に対して,精神科医によるインターネット上の適切な情報提供や予防的介入は重要と思われた。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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