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文献詳細

雑誌文献

精神医学49巻3号

2007年03月発行

文献概要

紹介

精神科薬物療法管理アプローチ(Medication Management Approaches in Psychiatry;MedMAP)の紹介

著者: 吉見明香12 加藤大慈1 久野恵理3 鈴木友理子4 上原久美1 内野俊郎5 平安良雄1

所属機関: 1横浜市立大学医学部精神医学教室 2ワシン坂病院 3インディアナ大学 4国立精神・神経センター精神保健研究所 社会復帰相談部 5久留米大学医学部神経精神科学教室

ページ範囲:P.311 - P.315

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はじめに

 わが国の統合失調症患者に対する薬物療法において,多剤併用が一般的に行われていることはよく知られている。1996年から第2世代抗精神病薬が使用可能となり,その臨床特性から,わが国でも薬剤総使用量の減量が図れるのではないかと期待されていた。しかし,第2世代抗精神病薬導入後も依然,多剤併用投与が多数を占めていることが,冨田11)や,Itoら2)の処方調査により明らかになっている。わが国において多剤併用療法が一般化している背景としては,これまで数多くの総説6,9)が報告されており,さまざまな要因が絡み合っていると考えられている。1例として竹内と渡辺の総説10)における多剤併用の要因を表1に示した。

 これまで,多剤併用療法の改善に対する取り組みとしては,大規模な処方調査3,7,15)が行われ,多剤併用療法の背景を探ると同時に,減量・単剤化技法の研究8,13)や,EBM(Evidence-based Medicine)を背景とした治療ガイドライン・薬物アルゴリズムの導入も行われている11)。このように多剤併用療法の問題点が多数の総説で喚起され,減量単剤化の取り組みが行われているにもかかわらず,多剤併用は改善されていない。その理由として,Itoらは医師のアルゴリズムに対する懐疑的な態度と看護師の薬剤増量要求が関与していると指摘し,医師および看護師に対する研修が必要であると述べている2)。また,風祭は薬物療法に並行して患者に対する心理社会的治療の必要性を説いている4)

 米国では,「精神科薬物療法管理アプローチ(Medication Management Approaches in Psychiatry,以下MedMAP)」という効果的な管理モデルが提示され,普及がすすめられている。現在我々は,MedMAPの普及が日本の多剤併用療法の改善の一助となると考え,導入を計画している。以下にその概要を紹介する。

参考文献

1) 伊藤斉,藤井康男:向精神薬の併用―polypharmacyの実態とメリット・デメリットの論議をめぐって.神経精神薬理 5:149-184,1983
2) Ito H, Koyama A, Higuchi T:Polypharmacy and excessive dosing:Psychiatrists’ perceptions of antipsychotic drug prescription. Br J Psychiatry 187:243-247, 2005
3) 川上富美郎,中嶋照夫,小山司,他:精神科薬物治療における多剤併用の実態調査―精神分裂病治療の併用投与を中心として.精神科治療学 12:795-803,1997
4) 風祭元:多剤併用の功と罪.臨精医 32:615-619,2003
5) Lehman AF, Steinwachs DM:Patterns of usual care for schizophrenia:Initial results from the Schizophrenia Patient Outcomes Research Team(PORT)client survey. Schizophr Bull 24:11-20, 1998
6) 宮本聖也,大木美香:抗精神病薬の選択と多剤併用.臨精薬理 5:843-854,2002
7) 阪本淳,小畑信彦,篠田和雄,他:東北地方7施設における向精神薬の処方調査―1979年との比較.精神経誌 91:28-39,1989
8) 鈴木健文,高野晴成,渡辺衝一郎,他:抗精神病薬の多剤併用療法への対応ガイドライン.臨精薬理 4:1423-1430,2001
9) 高橋明比古,石郷岡純:精神科治療技法ガイドライン 併用療法に関する留意点.精神科治療学 13(増刊号):258-261,1998
10) 竹内啓善,渡辺衝一郎:多剤併用療法はなぜ行われるか―抗精神病薬の併用を中心として.臨精医 32:621-627,2003
11) 冨田真幸:非定型抗精神病薬の普及と適応に関する研究.第3回非定型抗精神病薬研究会,東京,2003
12) Ungvari GS, Chung YG, Chee YK, et al:The pharmacological treatment of schizophrenia in Chinese patients:A comparison of prescription pattern between 1996 and 1999. Br J Pharmacol 54:437-444, 2002
13) 山田朋樹,上原久美,古野拓,他:統合失調症における多施設での抗精神病薬の多剤併用・大量療法からolanzapineへの切り替え研究.臨精薬理 7:1769-1784,2004
14) Young AS, Sullivan G, Burnam MA, et al:Measuring the quality of outpatient treatment for scizophrenia. Arch Gen Psychiatry 55:611-617, 1998
15) 山内慶太,馬場国博,池上直己,他:単科精神病院における処方の実態に関する研究―1973年,1979年と1993年の実態調査の比較.精神経誌 102:640-652,2000

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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