文献詳細
短報
低栄養状態を来し緊急を要した脳血管性うつ病に対しmethylphenidateが有効であった2症例
著者: 萬谷昭夫1 藤川徳美1 大森信忠1
所属機関: 1賀茂精神医療センター
ページ範囲:P.421 - P.424
文献概要
CT,MRIの導入により脳梗塞を基盤として発症する老年期うつ病が明らかとなり,1997年に脳血管性うつ病(vascular depression;VD)2,7)と呼ぶことが提唱された。VDは内因性うつ病患者と比較すると寛解退院率が低く,抗うつ薬によるせん妄,パーキンソニズムなどの副作用が多いことも明らかになり,重症例では抑うつ気分,意欲低下とともに,食事摂取ができず体重減少や脱水を来して死に至るケースもあり,内因性うつ病よりも治療抵抗性を示すものが多い3)。
Methylphenidate(MPD)は半減期が2~3時間で即効性があるドーパミンアゴニストで,本邦で遷延性うつ病に効能が認められている。しかし習慣性があり薬物乱用につながること,幻覚妄想などの精神症状の副作用から,うつ病に対して安易に使用すべきではない薬物である4,9,10)。
今回我々はMPDが有効であった高齢者のVDの2例を経験した。抗うつ効果は即効性があり,高齢者では濫用の危険が少ないため,食欲低下から低栄養状態,脱水症状を来し生命に危険があるVDに対しては,緊急に行うべき有用な治療法の一つであると考えられたので報告する。
参考文献
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