文献詳細
文献概要
オピニオン 発達障害に関連する諸概念と診断基準について
アスペルガー症候群の診断学的妥当性は,どこまで確立されているのか?
著者: 山崎晃資1
所属機関: 1目白大学人間学部子ども学科
ページ範囲:P.574 - P.577
文献購入ページに移動1981年,Wingは児童期の自閉的精神病質(Asperger,1944)をアスペルガー症候群として再登場させた。その後,アスペルガー症候群に関する著書や論文が急増し,臨床の現場でもアスペルガー症候群と診断される例が急激に増えている印象がある。今や少しでも「変わった人」がいると安易にアスペルガー症候群としてしまう傾向さえある。セカンド・オピニオンを求めて私の外来を訪れる当事者や家族にこれまでの診断・治療の経過を尋ねてみると,発達歴も聴取されずにきわめて短時間の診察で診断さている例や,「医学的治療はありません」と冷たく突き放されている例が少なからずある。
Wing自身が「パンドラの箱を開けてしまった」と述べているように,アスペルガー症候群はWingの当初の意図から逸脱し,予想もしなかった方向へと議論が進み始めた。Wing1)は,“Asperger Syndrome”(Klin, Volkmar, Sparrow編,Guilford Press, 2000)の第15章(p.418)で,「この症候群の性質を最初に考察した者として言うならば,本来私が考えていた目的は,この症候群が自閉症スペクトラムの一部であり,他の自閉性障害と区別される明確な境界線はないことと,その可能性が強いことを強調するという点であった。しかし,その後さまざまな研究者によって,アスペルガー症候群と自閉症は異なる障害であるという考え方が強くなっている。これは私の意図してきたこととは正反対である」と明記している。
参考文献
掲載誌情報