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巻頭言
精神科学は,セレンディピティを超えることができるか
著者: 吉川武男1
所属機関: 1理化学研究所脳科学総合研究センター
ページ範囲:P.674 - P.675
文献購入ページに移動患者が医者に要望するのは,自分の病を完全に治してくれる治療であり,治療手段の代表的なものが薬である。幸い,現在の精神科医は実(治療薬)の一つだに持ち合わせていない状況ではない。この幸運に与れたのは,1950年代のセレンディピティといえる向精神薬の開発の成功のおかげである。クロルプロマジン,ハロペリドール,三環系抗うつ薬の合成,炭酸リチウムの躁病に対する有効性の発見など,半世紀前の僥倖が今も活用されており,副作用が少なくなったと言われる最近の新薬といえども,開発の薬理パラダイムは基本的に変わっていないと思われる。
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