文献詳細
文献概要
巻頭言
精神科受診前の相談業務の中で思うこと―産後メンタルヘルスの場合
著者: 西園マーハ文1
所属機関: 1東京都精神医学総合研究所
ページ範囲:P.784 - P.785
文献購入ページに移動まず,精神症状の面では,予想していなかった病理がある。一番驚いたのは,幼少時から,ある種の病的体験を持ちながら,ほとんど問題なく社会生活を送り,出産している方がいらっしゃることであった。ある女性は,幼少時から幻視が見えるが,それについて不安に思うことはなく,他の人には見えないことはずっと知らなかった,と語った。また,自生思考のような過去の思い返しが時々あり,気づくと何時間もたっているという女性もいた。この方も,家事が忙しい時期には時間が取られて困るが,これまで特別悩んだことはないという。自我親和性というのがキーワードで,ご本人が困っていないので,この方々が精神科を受診したことがないのは言うまでもない。発達障害の成人例と思われる場合もあるがそうでないこともあり,グレーゾーンの精神症状の世界には,案外まだ広く知られていないものが残されているのではないかとも思われる。産後の抑うつは,精神科医から見ると,元からの病理とも関連すると思われる場合もあるが,ご本人の意識の中ではあまり関連づけられていない場合も多い。地域の方々とお話していると,医療機関を受診している方々は,症状に違和感を持ち,かつ治療意欲ありという条件が揃ったかなり特殊な群だと気づかされる。
掲載誌情報