文献詳細
特集 「緩和ケアチーム」―精神科医に期待すること,精神科医ができること
文献概要
はじめに
2005年のわが国のがん死亡数は32万5,885人で,総死亡者の30%を占める3)に至っている。これらのうち,ホスピスなどの緩和ケア専門病棟および在宅ホスピスケアを提供する施設で治療を受けていた者の割合は3%程度に過ぎず,大部分のがん患者は,緩和ケア専門の施設ではなく,一般病棟で終末期の治療を受けているのが現状である。
こうしたことから,一般病棟においても「全人的医療」を重視する緩和医療の実践を促進することが必要であるとされ,2002年には保険診療に「緩和ケア診療加算」が設定され,「緩和ケアチーム」が始動した。こうした変化は,延命一辺倒の医療から,患者の「尊厳ある意思」を尊重する医療への転換であるとも言えるであろう。
現在,さまざまながん専門病院,総合病院,一般病院においてコンサルテーション型の緩和ケアチームが導入されているが,緩和ケア診療加算の要件には,チームの構成メンバーに精神科医の存在が必須となっており,今後,緩和ケアにおける精神科医の存在意義や役割の明確性が求められてくることになろう。
そこで本稿では,緩和医療のあり方を考えるうえで重要な要素である「緩和ケアにおける精神科医の役割」について,①「患者の意思と家族の意思」の調整役,②チーム全体の「防波堤(終末期患者とのコミュニケーション)」という二側面から言及していきたい。
2005年のわが国のがん死亡数は32万5,885人で,総死亡者の30%を占める3)に至っている。これらのうち,ホスピスなどの緩和ケア専門病棟および在宅ホスピスケアを提供する施設で治療を受けていた者の割合は3%程度に過ぎず,大部分のがん患者は,緩和ケア専門の施設ではなく,一般病棟で終末期の治療を受けているのが現状である。
こうしたことから,一般病棟においても「全人的医療」を重視する緩和医療の実践を促進することが必要であるとされ,2002年には保険診療に「緩和ケア診療加算」が設定され,「緩和ケアチーム」が始動した。こうした変化は,延命一辺倒の医療から,患者の「尊厳ある意思」を尊重する医療への転換であるとも言えるであろう。
現在,さまざまながん専門病院,総合病院,一般病院においてコンサルテーション型の緩和ケアチームが導入されているが,緩和ケア診療加算の要件には,チームの構成メンバーに精神科医の存在が必須となっており,今後,緩和ケアにおける精神科医の存在意義や役割の明確性が求められてくることになろう。
そこで本稿では,緩和医療のあり方を考えるうえで重要な要素である「緩和ケアにおける精神科医の役割」について,①「患者の意思と家族の意思」の調整役,②チーム全体の「防波堤(終末期患者とのコミュニケーション)」という二側面から言及していきたい。
参考文献
1) Buckman R著,上竹正躬 訳:死にゆく人と何を話すか.メヂカルフレンド社,1990
2) 厚生労働省「わが国における尊厳死に関する研究」班 平成16年度総括・分担研究報告書(主任研究者:松島英介).2004
3) 厚生労働省:人口動態統計月報年計(概数)の概況.2005
4) 野口海,松島英介:がん患者のスピリチュアリチィ(Spirituality).臨精医 33:567-572,2004
5) 恒藤暁:最新緩和医療学.最新医学社,1999
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