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文献詳細

雑誌文献

精神医学49巻9号

2007年09月発行

特集 「緩和ケアチーム」―精神科医に期待すること,精神科医ができること

埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科の取り組み―心理士の立場から

著者: 和田芽衣12

所属機関: 1埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科 2北里大学大学院医療系研究科医療心理学博士課程

ページ範囲:P.947 - P.949

文献概要

はじめに―こころのケアとは?

 「身体的ケアだけでなく,心理的ケア(あるいは精神的ケア)も行う必要がある」「こころのケアが大切だ」,どちらもよく目にしたり,耳にします。誰もが漠然と心理的ケアやこころのケア(以後,こころのケア)が必要であることはわかっているのに,漠然としたまま各施設で試行錯誤している状態だと思います。こころのケアが重要であることに違いはありませんが,言葉だけが先行し,その言葉が何を意味しているのかを考えられることが少ないように感じています。

 2007年4月から心理士として精神腫瘍科の医師と回診を行い,がん患者さんとお会いするようになってから,こころのケアには2つの意味が含まれていることを意識するようになりました。まず1つ目の意味は,“精神的苦痛に対するケア”です。精神的苦痛とは,精神医学的症状(意識障害,うつ病,適応障害など)による苦痛を意味し,主に薬物療法や心理療法などの治療によって軽減可能な部分と考えます。そしてもう1つは“心理的苦痛に対するケア”です。心理的苦痛とは,精神的苦痛ではない部分,すなわち薬物療法や心理療法では解消しきれない苦痛を意味します。

 こころのケアという言葉を使うときに,この2つの違いを意識している人はあまり多くないように感じます。また,心理的苦痛のみが強調され,精神的苦痛が軽視されているような印象を受けます。がん医療において患者さんのこころのケアを行うということは,どちらか一方でなく,精神的苦痛と心理的苦痛という2つの苦痛を考慮していかなければなりません。そして,こころのケアのうち,精神的苦痛の軽減を図るのは主に精神科医の役割であり,心理的苦痛の軽減は「誰が」ではなく医療スタッフ全員で行うべきであると筆者は考えています。

参考文献

1) がん診療連携拠点病院の整備について(http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/02/tp0201-2.html)
2) がん対策基本法(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/dl/s0615-1c.pdf)
3) 保坂隆 監修,町田いずみ,保坂隆,中島義文 著:リエゾン心理士―臨床心理士の新しい役割.星和書店,2001
4) 筒井末春 監修,筒井末春,波多野美佳,小池眞規子 著:がん患者の心身医療.新興医学出版社,1999

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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