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研究と報告
Trifluoperazineの精神分裂病に対する使用経験
著者: 岩本信一1 松川善彌1 田渕健次郎1 田辺晋1 浜名康爾1 三好豊2
所属機関: 1神戸医大精神医学教室 2明石精神病院
ページ範囲:P.921 - P.925
文献購入ページに移動Chlorpromazineの出現以来,精神科における治療方針が変わり,いわゆる特殊薬物療法が治療の主役をはたすにいたつたことは周知のとおりである。ことにChlorpromazineを中心とするPhenothiazine誘導体は核置換基,側鎖の相違によつて精神病の病像に対する効果を異にし,Chlorpromazine以後多種のPhenothiazine誘導体が臨床に供された。しかしかかる特殊薬物についての臨床経験が豊富になるにしたがい,効果の一時性と速やかな薬剤耐性とから薬物療法の限界が論じられ,すでに一部では電撃やインシュリンなどの衝撃療法が再認識されつつあるように思われる。かかるさい,精神病治療剤は一方では症状選択性の高いものをねらい,他方ではより副作用の少ないものに向かつて研究が進められつつあり,中でも側鎖にPiperazine基を有するいわゆるPerazine groupが注目されている。
ここに報告するTrifluoperazineはPhenothiazine核にMethyl基が,またN-置換側鎖にMethylpiperazinylpropyl基が導入されたPerazine groupの新しいPhenothiazineでChlorpromazineに比し精神安定作用が強く,抗幻覚妄想作用や自発性促進作用がすぐれるといわれる。われわれは昭和37年8月から吉富製薬を通じて提供されたTrifluoperazineを精神分裂病者に試用し,既往の薬物と一応異なる効果を認めえたのでここに報告する次第である。
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