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文献概要

研究と報告

副腎皮質剤の投与成績よりみた精神分裂病およびうつ病における副腎皮質の意義に関する研究

著者: 高室昌一郎1

所属機関: 1国立国府台病院精神科

ページ範囲:P.305 - P.312

I.緒言
 精神分裂病およびうつ病の概念の基礎に内分泌機制を考えようとする努力は古くから行なわれ,1600年に発表されたPlattnerのCretinismusにおける精神症状の記載がその嚆矢であるといわれている。以後,内分泌研究の進歩にともない,甲状腺機能とその精神症状について,あるいは,精神分裂病の破瓜型が主として思春期に発症することなどから性hormon分泌と精神分裂病との関連について,ついで,脳下垂体・胸腺・副腎髄質および皮質hormonと精神分裂病およびうつ病などの関係について数多くの研究が発表されるにいたつた。
 しかし,一見するところ,これらの研究の多くは,それら疾患群における内分泌臓器の形態ないし機能が,対照群に比しある程度の差異をもつゆえに,その臓器の変調がただちにそれら精神疾患の発現因子であるとみなす素朴な因果論的な解釈を一元的に行なつてきたにすぎない感がある。しかるに,精神的ないし身体的のstressにさいし(第1表),脳下垂体より分泌されたACTHが副腎hormonの分泌を促進し,その結果生じるもろもろの変化が生体に防衛的作用をもたらし,生体の恒常性を保持しようとするいわゆるHomeostasisの概念が,Cannon1)およびSelye2)3)らにより発表されるにおよんで,精神分裂病およびうつ病などに対する内分泌研究の立場(脳下垂体―副腎系)がしだいに系統的発展的となり,ことに,精神分裂病およびうつ病と副腎皮質の意義に関して,Pincus,Hoaglandらの精細な研究4)を生ずるにいたつたものと思考される。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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