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研究と報告
精神分裂病の薬物療法について
著者: 遠坂治夫1
所属機関: 1県立三重大学医学部付属塩浜病院精神科
ページ範囲:P.455 - P.456
文献購入ページに移動 筆者1)はかつてレセルピンによる若干の精神分裂病者の接触回復の過程について報告したが,そのさい中核群分裂病の完全な寛解,すなわち分裂病の形で固定した反応様式が破られ人格の再編成再統合によつて共同世界へ復帰する全過程を最後まで追求することはできなかつた。ここに分裂病の中核群というのはMorel,Kraepelin以来Dementia praecoxとよびならわされ,満田の遺伝臨床的研究においても中核群として周辺群と区別される予後不良の定型的分裂病過程をさす。ここ10年ほどの間,われわれは各種の向精神薬をつぎつぎと臨床的に試用してきたがおもにその当面の効果を判定することに注意を奪われて,その間この領域でたとえばv. Baeyer2),M. Müller3),藤田4)のそれのようなすぐれた批判を含む寄与があるごとく,精神医学の臨床,なかんずく中核群分裂病の特殊薬物治療の現況を反省すると,その薬物療法の根本的問題においてわれわれのつねに念頭においていなければならない事情が存すると思われる。
予後良好な,変質性精神病に類する周辺群はここでは別として,われわれ臨床医は中核群分裂病の特殊薬物治療にあたつて,精神療法その他すべての有効な治療法を併用しなければならないことはもちろんであるが,特殊薬物療法という1つの治療方途を意識しながらも実際にはそれが治療体系としてなおいささか不徹底で隔靴掻痒の感あることを否定できない。
予後良好な,変質性精神病に類する周辺群はここでは別として,われわれ臨床医は中核群分裂病の特殊薬物治療にあたつて,精神療法その他すべての有効な治療法を併用しなければならないことはもちろんであるが,特殊薬物療法という1つの治療方途を意識しながらも実際にはそれが治療体系としてなおいささか不徹底で隔靴掻痒の感あることを否定できない。
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