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文献詳細

雑誌文献

精神医学5巻6号

1963年06月発行

研究と報告

慢性欠陥分裂病の薬物療法—レセルピンとトリプタノールの併用療法について

著者: 桑原公男1

所属機関: 1沼津精神病院

ページ範囲:P.477 - P.482

文献概要

Ⅰ.まえがき
 最近の精神科領域における治療の趨勢は薬物の急激なる発達にともなつて,Phenothiazine誘導体およびReserpinなどを中心とする薬物療法の進出がめざましく,往年のインシュリン療法および電撃療法のようなショック療法は現在激減しつつある状態である。しかしながら古来難治の精神分裂病に相対するとき,これらの薬物療法をもつてしてもなおその治療効果に限界を感じ,とくに無気力,自発性減退,自閉などのいわゆる欠陥症状に対しては満足すべき効果をあげえないことが多い。われわれ精神医学を志す者の悩みも実はここにあるのである。このたび作業病棟および慢性欠陥病棟を受けもつてこの感をいつそう深くした私は,2種の薬物を組合わせることにより,このような単一薬物による治療の限界を突破できぬものかと考えた。そのこころみのひとつがこれからのべようとするReserpin(R. p. と略す)とTryptanol(Tryp. と略す)の併用療法である。
 すでに古典的となつたがBarsaおよびKlineが鎮静期sendative period,不穏期turbulent period,統合期integrative period,の三期に分けてReserpinのもたらす臨床像の推移を説明して以来,R. p. が急性分裂病像より慢性分裂病像にその真価を発揮して,情動鎮圧,病的体験の遠隔化,接触および活動性の回復を増進することは諸家の説くところである。一方,これまで抗うつ剤としてうつ病に主として用いられてきたAmitriptyline(Tryptanol)は桜井によると不安焦燥感の軽快にともない,二次的ではあるが自発性意欲を改善するという,またJoseh Barsa and Johne Saunders,Edwin Dunlop2),Herbert Freed,Frankayd3),Wilfred Dorfman4)らの報告によるとTofranilまたはM. A. O. 阻害剤のような抗うつ剤と比べて副作用が少なく,抗うつ剤としてSpectrumが広いので,分裂病に与えた場合も他の症状を誘発したり,うつ症状以外の分裂症状を増悪する傾向が少なく,トランキライザーと併用することによつて好結果がえられると報告している。またDunlopはtryptanolはTofranilより副作用が一般に少ないが,drowsinessの傾向は強く,Tofranilに比して遅効性であり,anxiety,tension,psychomatic distressにはよいとのべている。わが国における中久喜,石川5)らの研究もほぼこれに一致している。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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