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研究と報告
手話法の「失語」
著者: 大橋博司1 浜中淑彦1
所属機関: 1京都大学医学部精神医学教室
ページ範囲:P.531 - P.535
文献購入ページに移動Ⅰ.緒言
従来失語症といえば,もつぱら病前健全な五官を有していた人にみられる口頭言語,書字言語の障害がとりあげられるのが通例で,聾唖者の相互理解の手段である種々の身ぶり言語,あるいは盲目者の用いる点字などに関する障害については,観察の機会がきわめてまれである所為もあつてあまり注目されていない。ことにわが国では,少なくともわれわれの知見のおよぶ範囲ではまつたくそのような報告をみないのであるが,欧米においてはすでにHughlings Jackson(1878)が聾唖者におけるかかる障害の可能性を予言して以来,少なくとも数例の報告が散見されるようである。われわれがここに記載する症例は聾唖者ではないが,一種の手話法の障害をきたしたという意味で,身ぶり言語の失語あるいは失行-失認問題の理解に寄与する点でもあればと考え,報告するしだいである。
従来失語症といえば,もつぱら病前健全な五官を有していた人にみられる口頭言語,書字言語の障害がとりあげられるのが通例で,聾唖者の相互理解の手段である種々の身ぶり言語,あるいは盲目者の用いる点字などに関する障害については,観察の機会がきわめてまれである所為もあつてあまり注目されていない。ことにわが国では,少なくともわれわれの知見のおよぶ範囲ではまつたくそのような報告をみないのであるが,欧米においてはすでにHughlings Jackson(1878)が聾唖者におけるかかる障害の可能性を予言して以来,少なくとも数例の報告が散見されるようである。われわれがここに記載する症例は聾唖者ではないが,一種の手話法の障害をきたしたという意味で,身ぶり言語の失語あるいは失行-失認問題の理解に寄与する点でもあればと考え,報告するしだいである。
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