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研究と報告
トラキランによる精神分裂病の治療(第2報)—とくに陳旧分裂病に対する効果判定表の応用について
著者: 桜井図南男1 牧武1 中沢洋一1 志田堅四郎1 梅末正男1
所属機関: 1九州大学医学部神経精神医学教室
ページ範囲:P.715 - P.720
文献購入ページに移動私たちは,第1報において,精神分裂病18例を含む精神疾患21例に対し,トラキラン(最高1日450mgまで)を投与し,その成績を検討したが,全般的にみて
有効:5例(24%)
やや有効:4例(20%)
無効:12例(56%)
であつた。
とくに精神分裂病に対しては
(1)易感性が調整され,関係念慮のうすらいでゆくものを数例経験した。
(2)心気的な体感異常を訴えていた患者によい効果があつた。
(3)活動性が低下し,不活発になつている患者にこころみ,数例において,活発さの増加を経験した。
このような事実から,精神分裂病に対するトラキランの作用のしかたには,他の精神薬物と多少異なつた面があるのではなかろうかと考えていたのであるが,その後,柴原1)(高茶屋病院),井上・浦上2)(多摩病院),小林・相沢・高橋3)(東北大精神科),佐々木・島崎(広島大精神科)・高畑・品川4)(長尾病院)などの報告を読むにおよんで,私たちの経験した第3の効果が,陳旧分裂病に対し,かなり特殊な効果をあげている事実を知り,この点に関し,さらに検討してみたいと考えるようになつた。
第1報の対象とした精神分裂病はいずれも慢性例ではあつたが,陳旧例というわけではなく,したがつて,状態像にはかなり複雑なものが認められていたのであるが,今回はなるべく陳旧例を選び,情動的に褪色し,活動性が低下し,無為に日を送つているような患者を対象にした。病的異常体験が活発に動いているようなものは,なるべく避けたのである。
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