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文献概要
特集 精神医学的コミュニケーションとは何か―精神科専門医を目指す人のために
認知療法の立場から
著者: 大野裕1
所属機関: 1慶應義塾大学保健管理センター
ページ範囲:P.35 - P.40
文献購入ページに移動はじめに
精神医学的コミュニケーションについて認知療法1,2)の立場から論じるが,本稿で書くコミュニケーションのあり方は,必ずしも認知療法に限ったことではなく,精神医学的コミュニケーション一般に共通するものであると考えている。それは,認知療法が特別なアプローチではなく,あくまでも常識的なかかわりを重視するためである。それはまた,患者の気持ちに共感しながら,患者が主体的に自分の認知や行動に目を向け,その適応的な部分を修正して,問題に対処していく力を引き出し,伸ばすことを目的とするものである。このような基本的な姿勢があるからこそ,認知療法は種々の精神疾患に効果的であることが実証されている4)のだと考えることができる。
私たち精神科医は,情緒的な苦しみを感じている人を治療の対象とするが,情緒それ自体を操作して苦しみを軽減することはできない。そのために,認知療法では,認知を通して情緒に働きかける。したがって,そのアプローチは特殊なものではなく,一般の精神医学的面接で活用可能なものであると,私は考えている。そうした理解に基づいて,以下に認知療法的なコミュニケーションについて概説することにしたい。
精神医学的コミュニケーションについて認知療法1,2)の立場から論じるが,本稿で書くコミュニケーションのあり方は,必ずしも認知療法に限ったことではなく,精神医学的コミュニケーション一般に共通するものであると考えている。それは,認知療法が特別なアプローチではなく,あくまでも常識的なかかわりを重視するためである。それはまた,患者の気持ちに共感しながら,患者が主体的に自分の認知や行動に目を向け,その適応的な部分を修正して,問題に対処していく力を引き出し,伸ばすことを目的とするものである。このような基本的な姿勢があるからこそ,認知療法は種々の精神疾患に効果的であることが実証されている4)のだと考えることができる。
私たち精神科医は,情緒的な苦しみを感じている人を治療の対象とするが,情緒それ自体を操作して苦しみを軽減することはできない。そのために,認知療法では,認知を通して情緒に働きかける。したがって,そのアプローチは特殊なものではなく,一般の精神医学的面接で活用可能なものであると,私は考えている。そうした理解に基づいて,以下に認知療法的なコミュニケーションについて概説することにしたい。
参考文献
1) Beck AT:Cognitive Therapy and Emotional Disorders. International Universities Press, New York, 1976(大野裕 監訳:認知療法―新しい精神療法の発展.岩崎学術出版社,1990)
2) Beck AT, Rush AJ, Shaw BF, et al:Cognitive Therapy of Depression. Guilford Press, New York, 1979(坂野雄二 監訳:うつ病の認知療法.岩崎学術出版社,1992)
3) McCullough JP:Treatment of Chronic Depression:Cognitive behavioral analysis system of psychotherapy. Guilford Press, New York, 2000(古川壽亮,岡本泰昌,大野裕,他訳:慢性うつ病の精神療法―CBASPの理論と技法.医学書院,2005)
4) Nathan PE, Gorman JM:A Guide to Treatment that Work, third edition. Oxford University Press, New York, 2007
5) 大野裕:精神科一般臨床における認知療法的アプローチの総合的実践―統合的短時間認知療法.大野裕,小谷津孝明 編,認知療法ハンドブック.星和書店,pp247-281,1996
6) 大野裕:こころが晴れるノート―うつと不安の認知療法自習帳.創元社,2003
7) Wright JH, Basco MR, Thase ME:Learning Cognitive-behavior Therapy. An illustrated guide. American Psychiatric Publishing, Washington DC and London, 2006(大野裕 訳:認知行動療法トレーニングブック.医学書院,2007)
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