文献詳細
文献概要
研究と報告
精神科入院患者におけるイレウスのリスクファクター
著者: 菊池章1 寺尾敦1
所属機関: 1浦和神経サナトリウム
ページ範囲:P.981 - P.989
文献購入ページに移動抄録
麻痺性イレウスに罹患した精神科入院患者31人を対照群239人と比較し,ケースコントロールスタディを行った。得られたイレウスのリスクファクターは,過去のイレウスの既往,精神症状が重症であること,下剤の使用率が高く種類が多いこと,抗パーキンソン薬の種類が多いこと,体重が少ないこと,ヘモグロビンの低値,中性脂肪の低値である。抗精神病薬の量や種類に有意な違いはなかった。これらの結果から,抗精神病薬や抗パーキンソン薬など抗コリン作用の強い薬剤の長期使用がイレウスの準備状態を形成し,さらに栄養の吸収障害,下剤の反応性の低下などが加わった患者がイレウスに陥りやすくなると考えられた。
麻痺性イレウスに罹患した精神科入院患者31人を対照群239人と比較し,ケースコントロールスタディを行った。得られたイレウスのリスクファクターは,過去のイレウスの既往,精神症状が重症であること,下剤の使用率が高く種類が多いこと,抗パーキンソン薬の種類が多いこと,体重が少ないこと,ヘモグロビンの低値,中性脂肪の低値である。抗精神病薬の量や種類に有意な違いはなかった。これらの結果から,抗精神病薬や抗パーキンソン薬など抗コリン作用の強い薬剤の長期使用がイレウスの準備状態を形成し,さらに栄養の吸収障害,下剤の反応性の低下などが加わった患者がイレウスに陥りやすくなると考えられた。
参考文献
1) Caroff SN, Mann SC:Neuroleptic maligmant syndrome. Med Clin North Am 77:185-202, 1993
2) Dome P, Teleki Z, Kotanyi R:Paralytic ileus associated with combined atypical antipsychotic therapy. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry 31:557-560, 2007
3) 福井チナミ,塩飽徳行:下剤.medicina 37:1757-1760,2000
4) Giordano J, Canter JW, Huang A:Fatal paralytic complicating phenothiazine therapy. South Med J 68:351-353, 1975
5) 羽田忠,矢野和之,関忠盛:精神病院在院患者にみられる麻痺性イレウスの臨床的・病理的検索.精神医学 21:71-78,1979
6) 羽生丕,風祭元:慢性便秘・麻痺性イレウス・巨大結腸症.臨精医 25:1183-1188,1996
7) 羽生丕,大石陽子,木田孝志,他:分裂病入院患者にみられる慢性便秘・麻痺性イレウス・巨大結腸症.精神医学 39:23-29,1997
8) 堀彰,大久保健,吉野邦英:向精神薬長期服用中の精神科入院患者の腹部単純レントゲン写真所見―巨大結腸症の発生頻度.精神医学 29:603-607,1987
9) Ichimiya Y, Ichimiya Y, Sakurai N, et al:Lifetime prognosis of schizophrenia extended observation(more than 40 years)of 129 patients with typical schizophrenia. Pschichogeriatrics 5:18-21, 2005
10) 稲垣中,稲田俊也,藤井康夫,他:向精神薬の等価換算.星和書店,1999
11) 風祭元:我が国の精神科医療における長期大量多剤併用とその副作用.精神医学 39:1181-1187,1997
12) 菊池章,寺尾敦:悪性症候群の発症要因―検査所見および薬物の観点から.臨精医 32:989-999,2003
13) 菊池章,寺尾敦:悪性症候群の血液生化学的検査所見と重症化指標.精神医学 48:37-43,2006
14) 三好宣明,金子嗣郎,小林暉佳,他:松沢病院における薬物療法の推移(第一報).精神薬療基金年報 9:258-266,1979
15) 三好宣明,金子嗣郎,小林暉佳,他:松沢病院における薬物療法の推移(第二報).精神薬療基金年報 13:269-273,1981
16) 長嶺敬彦:有害事象からみた多剤併用療法の問題点.精神科治療学 20:295-298,2005
17) 助川鶴平,松島嘉彦,坂本泉,他:精神科入院患者における下剤大量投与の原因.臨精薬理 8:329-336,2005
18) Suzuki T, Uchida H, Watanabe K, et al:Minimizing antipsychotic medication obviated the need for enema against severe constipation leading to paralytic ileus:A case report. J Clin Pharm Ther 32:525-527, 2007
掲載誌情報