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短報
長期間難治性てんかんとして治療されていたナルコレプシーの1例
著者: 住吉秀律12 山下英尚2 萬谷昭夫1 山脇成人2
所属機関: 1JA吉田総合病院精神神経科 2広島大学大学院医歯薬学総合研究科 先進医療開発科学講座 精神神経医科学
ページ範囲:P.997 - P.1000
文献購入ページに移動ナルコレプシーは日中の過度の眠気と睡眠発作を主徴とする睡眠障害であり,1880年にGelineauによりnarco(麻痺,脱力)とlepsie(発作)というギリシャ語から最初に名づけられた疾患である2)。有病率は1/600~1/2,000人で日本人に多く,通常10歳代に日中の居眠りの反復で発症し,同時に,またはその後情動脱力発作が生じる経過をとることが多く3),中年期以降に発症することはまれであるといわれている11)。ナルコレプシーの特徴的な症状として,昼間の過眠と耐え難い短時間の睡眠発作,笑うなどの情動を契機として起こる情動脱力発作,寝入り際の現実感のある鮮明な夢―入眠時幻覚,目覚めているのに金縛り状態で身動きできない睡眠麻痺,中途覚醒が多い夜間睡眠分断などが挙げられる9)。主に特発性過眠症,睡眠呼吸障害,リズム障害や睡眠不足による過眠などが鑑別疾患として挙げられる4)が,一部の症状しか認められない場合や,患者の訴える症状が一部のみの断片的なものであると診断を誤る可能性がある10)。神経内科疾患や神経症,うつ病などの精神疾患と誤診される症例があるとの報告がみられるが5),てんかんと誤診されたとの報告は少なく,情動脱力発作がてんかん発作と誤診されている可能性が指摘されている12)。
今回筆者らは,6年間てんかんとの診断で抗てんかん薬を投与されたが症状が改善せず,終夜睡眠ポリグラフィ(PSG)・睡眠潜時反復測定検査(MSLT)を施行することによりナルコレプシーと診断した症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。
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