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文献詳細

雑誌文献

精神医学50巻10号

2008年10月発行

文献概要

資料

社会的ひきこもり家族教室に関するアンケート調査

著者: 辻本哲士1 辻元宏1

所属機関: 1滋賀県立精神保健福祉センター

ページ範囲:P.1005 - P.1013

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はじめに

 「社会的ひきこもり」の概念が提唱されてほぼ10年になり4),現在では,フリーター・ニート問題とも関連して一般用語としても流布するようになった9)。これら思春期青年期問題の援助には,さまざまなプログラムを継続して利用できるシステムが重要になってくる3)。地域精神保健の役割として,本人や家族を社会の中で孤立させず,「社会に出て行けるまで待つこと」を保証し,彼らが自らの生活を楽しめるような環境を整備していくことが必要となる。

 滋賀県立精神保健総合センターは1992年に開設され,診療部(主に病院部門として外来および入院病棟を受け持つ),社会復帰部(主にデイケアを行う),地域保健部(主に精神保健福祉センター業務を行う)の3部門からなる。医療に関しては診療部が担い,保健福祉に関しては地域保健部が担当し,公的機関として医療・保健福祉トータルとして援助していきやすい土壌が作られている。地域保健部では,1998年度より不登校・ひきこもり対策として,家族に対しての個別相談,本人に対しての心理士・保健師による心理面接を始めた。相談件数が激増したことから,1999年から家族への心理教育とエンパワーメントの場として「ひきこもり家族教室」を開講し,教室修了者に対しての継続的なフォローとして「家族交流会」という場を提供してきた。

 2003年には20歳以上の社会的ひきこもりの子を持つ親の会「とまとの会」が自助グループとして立ち上がり,当センターもサポートしていくこととなった。

 これまで,家族教室の評価やひきこもり症例の経年的な変化についての調査研究は数少ない。そこで今回,家族教室終了後の家族・本人の状況を把握することで教室事業の評価を行い,今後のひきこもり対策の一助としていくことを目的に,郵送によるアンケート調査を実施したので報告する(滋賀県立精神保健総合センターは地方公営企業法全部適用にて,2006年4月から,滋賀県立精神保健福祉センターと滋賀県立精神医療センターに分かれた)。

参考文献

1) 青木省三:不登校の治療と援助を再考する.精神科治療学 21:287-291, 2006
2) 伊藤順一郎,吉田光爾,小林清香,他:「社会的ひきこもり」に関する相談・援助状況実態調査.地域精神保健における介入のあり方に関する研究.総合研究報告書,2003
3) 臼井卓士,臼井みどり:ニート・社会的ひきこもりからの回復に向けての取り組み.精神医学 48:519-528,2006
4) 斉藤環:社会的ひきこもり.PHP研究所,1998
5) 斉藤環:ひきこもりの治療と援助―本人に対して.精神医学 45:263-269, 2003
6) 斉藤環:社会的ひきこもり.日社精医誌 11:323-328, 2003
7) 本間博彰:不登校の家族のアプローチ.精神科治療学 21:293-298, 2006
8) 清田晃生,齊藤万比古:不登校の年齢的変化.精神科治療学 21:281-286, 2006
9) 楢林理一郎:ひきこもりの治療と援助―家族へのアプローチ.精神医学 45:271-277, 2003
10) 辻本哲士,大門一司,泉和秀,他:精神科医療施設で診療する不登校・社会的ひきこもり.精神経誌 109:313-320, 2007
11) 諏訪真美,鈴木國文:「ひきこもり」概念の社会報道と精神医学.思春青年精医 16:61-74, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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