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文献詳細

雑誌文献

精神医学50巻11号

2008年11月発行

巻頭言

文化と文明

著者: 武田専1

所属機関: 1武田病院

ページ範囲:P.1042 - P.1043

文献概要

 西洋文明の伝統を受け継ぎながらも,効率性と平明さとを追求するアメリカ文化は,全世界を席捲しようと意図してきた。デューイらにより代表されるアメリカのプラグマティズムは,知識が真理であるか否かは実際に役立つかどうかによって決定されるとする思想である。1980年に発表されたDSM-Ⅲは,精神科診断の国際的な分類を確立し,具体的かつ体系的な調査から得られたデータを基礎として,疾病概念やその分類,さらには診断技法にまで拡大しようとする意図のもとにスタートしている。

 たとえばうつ病であるが,私たちが精神医学を学んだ昭和20年代後半には,統合失調症(分裂病)とともに,内因性精神病の代表的なものとされ,器質的な気質性の感情要因が優位とされ,感情性精神病ともいわれた。現在では地球上の5人に1人はうつであるとまでいわれている。かつては,その基底には循環性格といわれる気質があるとされ,健常に近い範囲内でもうつと躁の気分が動いているといわれた。このような人たちは必ずしも躁うつ病になるとは限らず,気分が沈んで何もかも嫌になり,仕事も手につかぬスランプの時期はあっても,陽気で社交的な軽躁気分の時期もあり,世間的に成功するような人たちもいた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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