icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学50巻11号

2008年11月発行

オピニオン・医療観察法の見直しに向けて

なぜ医療観察法は廃止しなければならないか

著者: 伊藤哲寛1

所属機関: 1北海道立緑が丘病院

ページ範囲:P.1062 - P.1066

文献概要

はじめに

 「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(以下,医療観察法)が動き出して3年を経過した。2年後の2010年には見直しが予定されている。

 医療観察法は,保安的要素を内に秘めつつ,表向きは医療と社会復帰の促進を謳うという二重構造を持ち,その運用も入退院の決定を司法が担い,医療と社会復帰の責任は医療が担うという司法モデルと医療モデルの折衷的性格に特徴がある。その多義的性格ゆえに,保安処分制度導入を積極的に進めてきた立場からも,保安処分制度に反対してきた立場からも,さまざまな問題が指摘されている。施行後5年の見直しに向けて今後ますます論議が活発になると思われる。

 筆者は,臨床の現場の精神科医として,この法律は廃止すべきだと考えている。本稿では,法制定までの背景,この法律の基本的性格,施行以後の状況,予想される見直しの方向などについて述べ,廃止の論拠を示すことにする。なお,医療観察法には「強制隔離の法的根拠」「適正手続き問題」など法律学的に吟味されなければならない疑義もあるが,ここでは触れない。

参考文献

1) 平田豊明:鑑定入院における医療的観察に関する(分担)研究.平成19年度厚生労働科学研究「医療観察法による医療提供のあり方に関する研究報告書」,pp35-76, 2008
2) 伊藤哲寛:医療観察法の行方.病・地域精医 49:13-22, 2006
3) 岩成秀夫:他害行為を行った精神障害者に対する通院治療に関する研究.平成19年度厚生労働科学分担研究報告書,pp1-63, 2008
4) 中島直:精神医療関係者からの反対意見.法と精神医療 18:41-53,2004
5) 中山研一:心神喪失者等医療観察法の性格―「医療の必要性」と「再犯のおそれのジレンマ」.成文堂,2006
6) 日本精神神経学会:精神医療と法に関する委員会報告「再犯予測について」.精神経誌 104:978-1001, 2002
7) 吉川和男,山上皓:医療観察法制度の意義と課題.精神経誌 108:490-496, 2006
8) 和田久美子,田中奈緒子,中屋淑,他:医療観察法申し立て対象者225例の特性と処遇決定の現状.臨精医 37:415-423, 2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら