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文献詳細

雑誌文献

精神医学50巻12号

2008年12月発行

特集 Assertive Community Treatment(ACT)は日本の地域精神医療の柱になれるか?

ACTとアウトリーチ

著者: 高木俊介1 上田綾子2 岡田愛2 栗山康弘3

所属機関: 1たかぎクリニック 2特定非営利活動法人京都メンタルケア・アクション 3京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻

ページ範囲:P.1195 - P.1201

文献概要

はじめに

 アウトリーチ(outreach)という言葉は,近年の「在宅医療」や「訪問看護」の推進という国の施策方針にあわせて,医療関係者の間で使われることが多くなった。しかし,この言葉が本来は社会福祉領域の専門用語であることは,意外に知られていない。

 医療関係者の多くは,この言葉を「訪問」という意味で何気なく使っているように思われる。ランダムハウス英語辞典を開くと,名詞としては,①手を伸ばすこと,届こうとすること,②手を伸ばした距離,到達距離,③(より広範な地域社会などへの)至れり尽くせりの奉仕[福祉,救済]活動,消費者や大衆への接触と対応,出先機関の業務とある。訪問看護という時の「訪問」や,医者による訪問である「往診」という直接的な訳語は載っていない。そして,「アウトリーチ」という語の本来の意味は,「至れり尽くせりの奉仕活動」「接触と対応」という,「訪問」や「往診」の中味であることがわかる。

 それに応じて,福祉領域では,「アウトリーチとは,地域を拠点とした機関でのソーシャルワーカーの活動のことをいう。居住している家,または普段過ごしている環境にいる人々のところへ,さまざまなサービスそのものをもたらしたり,利用可能なサービスについての情報をもたらしたりすることである(「The Social Work Dictionary」1)より引用)」と定義され,「『ケース発見』から社会資源やサービスに連結させていく過程を扱う総論的なケアマネジメントの過程」3)とされる。つまり,従来の医療や福祉では,こぼれ落ちた利用者に対して行われるものであるという内容が付け加わるのである(上記定義中の「ソーシャルワーカーの活動」という件は,現代医学や福祉における専門性が職種間でクロスオーバーしつつある実態に照らせば「さまざまな職種におけるソーシャルワーク的活動」と読み替えてよいだろう)。

 本論では,アウトリーチの意味をこのようにとらえ直したうえで,ACT(assertive community treatment;包括的地域生活支援プログラム)におけるアウトリーチの特色や意義を,事例に沿いながら論じる。

参考文献

ed. National Association of Social Workers, Washington DC, pp342, 1999
2) 英一也,足立千啓,小川ひかる,他:ACTにおける他職種の協働―臨床現場でチームアプローチした事例を中心に―.精神臨サービス 7:508-514,2007
3) 久松信夫,小野寺敦志:認知症高齢者と家族へのアウトリーチの意義―介護保険下における実践の役割と条件―.老年社会科学 28:297-311,2006
4) 西尾雅明:ACT入門―精神障害者のための包括型地域生活支援プログラム.金剛出版,pp16-19,2004
5) Sullivan HS 著,中井久夫,山口隆 共訳:現代精神医学の概念―サリヴァン.みすず書房,pp43-57,1976
6) 高木俊介:ACT-Kの挑戦―ACTがひらく精神医療・福祉の未来.批評社,2008
7) 高木俊介,上田綾子,岡田愛,他:日本におけるACT実現の可能性をさぐる~実現は可能である,しかし…….臨精医 37:987-992,2008
8) Teague GB, Bond GR, Drake RE:Program fidelity in assertive community treatment:Development and use of a measure. Am J Orthopsychiatry 68:216-232, 1998

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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