文献詳細
文献概要
私のカルテから
過敏性腸症候群の背景に社会不安障害が明らかとなった1症例
著者: 清水義雄1 岸口武寛1
所属機関: 1国立病院機構岡山医療センター精神科
ページ範囲:P.1227 - P.1229
文献購入ページに移動はじめに
過敏性腸症候群(IBS)の診断基準は,慢性的に腹痛や腹部不快感があり,下痢あるいは便秘などの便通異常を伴い,症状を説明する器質的疾患や生化学的異常が同定されないものと定義されている3)。IBSでは緊張場面での症状出現や予期不安による行動制限がよくみられ,IBSとパニック障害との関連については詳しく報告されている2,9)が,意外なことに社会不安障害(SAD)との関連についての報告は乏しい。今回我々は,IBSの背景にSADの存在が明らかとなり,その治療について示唆に富む症例を経験したので報告する。
過敏性腸症候群(IBS)の診断基準は,慢性的に腹痛や腹部不快感があり,下痢あるいは便秘などの便通異常を伴い,症状を説明する器質的疾患や生化学的異常が同定されないものと定義されている3)。IBSでは緊張場面での症状出現や予期不安による行動制限がよくみられ,IBSとパニック障害との関連については詳しく報告されている2,9)が,意外なことに社会不安障害(SAD)との関連についての報告は乏しい。今回我々は,IBSの背景にSADの存在が明らかとなり,その治療について示唆に富む症例を経験したので報告する。
参考文献
1) 朝倉聡,井上誠士郎,佐々木史,他:Liebowitz Social Anxiety Scale(LSAS)日本語版の信頼性および妥当性の検討.精神医学 44:1077-1084,2002
2) 遠藤由香,吉澤正彦,福土審,他:過敏性腸症候群におけるパニック障害.心身医 40:339-346,2000
3) 本郷道夫,佐藤康弘:過敏性腸症候群の定義と疾患概念.日本臨牀 64:1415-1419,2006
4) Kaplan DS, Masand PS, Gupta S:The relationship of irritable bowel syndrome and panic disorder. Ann Clin Psychiatry 8:81-88, 1996
5) Masand PS, Kaplan DS, Gupta S, et al:Major depression and irritable bowel syndrome. J Clin Psychiatry 56:363-367, 1995
6) 長堀正和,渡辺守:ガイドラインを踏まえた治療.日本臨牀 64:1477-1481,2006
7) Pae CU, Masand PS, Ajwani N, et al:Irritable bowel syndrome in psychiatric perspective. Int J Clin Pract 61:1708-1718, 2007
:The epidemiology of irritable bowel syndrome in North America. Am J Gastroenterol 97:1910-1915, 2002
9) 菅谷渚,貝谷久宣,熊野宏昭,他:過敏性腸症候群を伴うパニック障害患者の臨床的特徴.心身医 45:915-922,2005
10) 多田幸司,小島卓也:社会恐怖に関する臨床的研究.精神経誌 102:355-366,2000
11) 田島治:社会不安障害における薬物療法の位置付けと心理教育的アプローチ.臨精薬理 8:47-53,2005
12) Tollefson GD, Luxenberg M, Valentine R, et al:An open label trial of alprazolam in comorbid irritable bowel syndrome and generalized anxiety disorder. J Clin Psychiatry 52:502-508, 1991
13) 八田宏之,東あかね,八城博子,他:Hospital Anxiety and Depression Scale日本語版の信頼性と妥当性の検討.心身医 38:309-315,1998
掲載誌情報