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巻頭言
Publish in English or Perish
著者: 広瀬徹也12
所属機関: 1(財)神経研究所 2晴和病院
ページ範囲:P.214 - P.215
文献購入ページに移動 表題は東京大学と帝京大学で脳神経外科教授を務めた碩学の世界的脳神経外科医,佐野圭司が約10年前JAMA日本語版(1997年6月号3頁)に書いたエッセー“Publish or Perish”に‘in English’を加えたものである。米国由来のこの句の原意は日本語で「発表せよ,しからずんば滅べ」ということになろうか。大方の予想を裏切って佐野は論文書きを奨励してこれを書いたのではない。真意は全く逆で,正式にはPublish or Perish PrincipleというのをPPPと略して,このPPPが日本や世界の大学で浸透した結果,臨床の医学者も臨床技能より論文発表に重点を置きすぎていることへの憂慮がこのエッセー執筆の動機になっている。佐野は臨床能力の評価方法に適切なものがないがために,PPPが盛んになるのを消極的に認めながらも,次のように記している。「このPPPはそれなりに研究業績(残念ながら多くはこまぎれの)を「増加」させる効果はあるが,果たして本当に学問を「進歩」させることにつながるものであろうか」。佐野はまたPPPに関連してインパクトファクターの高いNatureやScienceといった基礎科学者向けの英文雑誌への投稿を目指して,若い臨床家が基礎系教室で研究したがる傾向にも批判的に言及している。
佐野の憂いをよそにその後もPPPはますます盛んとなり,インパクトファクターの高さで選ばれた教授がその臨床能力のなさゆえに大学の内外で問題となって,再度教授選考が行われた大学もあると仄聞するほどになっている。もちろん,研究的視点や土台のない臨床はマンネリズムから退歩に陥るので,臨床も常に研究との接点を持っていなければならないことはいうまでもないことである。臨床医学にも多くの分野があり,それぞれの特質から上記の問題が深刻な分野からそれほどでないものもあることは事実であろう。佐野の専門である脳神経外科をはじめ手術が不可欠な外科系や,私どもの専門である精神科が本誌50巻1号の特集にもなった‘精神医学的コミュニケーション’を臨床の柱とするために,最もインパクトファクターと臨床技能がかけ離れる分野であるといえよう。
佐野の憂いをよそにその後もPPPはますます盛んとなり,インパクトファクターの高さで選ばれた教授がその臨床能力のなさゆえに大学の内外で問題となって,再度教授選考が行われた大学もあると仄聞するほどになっている。もちろん,研究的視点や土台のない臨床はマンネリズムから退歩に陥るので,臨床も常に研究との接点を持っていなければならないことはいうまでもないことである。臨床医学にも多くの分野があり,それぞれの特質から上記の問題が深刻な分野からそれほどでないものもあることは事実であろう。佐野の専門である脳神経外科をはじめ手術が不可欠な外科系や,私どもの専門である精神科が本誌50巻1号の特集にもなった‘精神医学的コミュニケーション’を臨床の柱とするために,最もインパクトファクターと臨床技能がかけ離れる分野であるといえよう。
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