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短報
アリピプラゾールが奏効したセネストパチー(妄想性障害)の1例
著者: 杉浦寛奈12 都甲崇1 山本かおり1 六本木知秀1 藤原晶子1 杉山直也1 平安良雄1
所属機関: 1横浜市立大学医学部精神医学教室 2研水会平塚病院
ページ範囲:P.449 - P.452
文献購入ページに移動セネストパチーは,十分に言語化することができない身体的な違和感,不快感を基本特性とする疾患であり,1907年DupreとCamusにより内的共通感覚の障害に由来する疾患として提唱された1)。しかしながら,セネストパチー症状が病像を支配する病態は統合失調症に限らず他の精神疾患の一症候としても認められるため,その精神疾患における位置づけについては多くの議論があった。たとえばHuberは,さまざまな奇妙な身体感覚の異常を主訴とし自律神経および運動知覚神経系の症状を伴う一群を体感異常型統合失調症と呼び,この中にセネストパチーは含まれると主張した2)。一方Ladeeは,セネストパチーを統合失調症の一部ではなく,むしろ離人症あるいは身体精神型離人症であると主張した5)。また日本では,小池4)や吉松7)によって,セネストパチーを離人症や自我意識障害の観点からとらえる試みがなされている。以上のように,セネストパチーは知覚の障害,統合失調症圏の疾患,自我の障害,神経症圏の疾患などさまざまな疾患でみられる病像である。しかし,現在の操作的診断基準では,ICD-10では統合失調症圏もしくは身体表現性障害として,DSM-IVでは妄想性障害身体型として診断される場合が多い。
セネストパチーの治療には,これまでさまざまな向精神薬の使用や精神療法的な関与が行われてきたがその効果は限定的であり,一般には難治性の精神疾患と考えられてきた。今回我々は,操作的診断基準では妄想性障害と診断されるセネストパチーの1例に対してアリピプラゾールによる治療を行い,精神症状の改善が得られたので,若干の考察を加えて報告する。
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