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文献詳細

雑誌文献

精神医学50巻8号

2008年08月発行

文献概要

特集 成人期のアスペルガー症候群・Ⅱ

臨床現場からみた成人期のアスペルガー症候群

著者: 宮川香織1 桝屋二郎2 飯森眞喜雄1

所属機関: 1東京医科大学精神医学講座 2神奈川医療少年院

ページ範囲:P.749 - P.757

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はじめに

 近年,「アスペルガー症候群」の診断で大学病院に紹介されてくる患者が増え続けている。なかにはインターネットの記事を見て自己診断し,「アスペルガーではないか?」と受診する者も出てきている。世間の耳目を集めた青少年の犯罪報道でも,この診断名がすでに医学的概念が定まっている疾患であるかのように書かれている。しかし,ベテランの精神科医に「アスペルガーって何ですか?」と訊いても,明瞭な答えが返ってくることはほとんどない。「こういうものだ」「ああいうものだ」と,まるで正体のつかめないヌエのような疾患らしい。ましてや,成人例ではいっそう不明瞭である。

 こうした背景があってか,日本の精神医学雑誌でも「アスペルガー特集」がにわかに目につくようになっている。本特集もそうした現状の中で編まれている。だが,アスペルガー症候群は実際に増えているのだろうか? それとも,精神科医が時流に乗って安易に診断し始めたために増えたように見えるだけなのであろうか?

 近年の数多い論文では,疾病概念や症候学的問題,分類や診断上の問題,他の精神疾患との異同などが取り上げられることが多いが,ここではあまり取り上げられることのない,臨床現場からみた成人のアスペルガー症候群の問題について述べてみたい。

参考文献

1) Baron-Cohen S, Tager-Flusberg H, Cohen DJ:Understanding Other Minds-Perspectives from Autism, Oxford University Press, Oxford, 1993(田原俊司 監訳:心の理論―自閉症の視点から(上)(下).八千代出版,1997)
2) Frith U:Autism and Asperger syndrome. The Press Syndicate of the University of Cambridge, Cambridge, 1991(冨田真紀 訳:自閉症とアスペルガー症候群.東京書籍,1996)
3) 本田秀夫,清水康夫,岩佐光章:アスペルガー症候群の早期経過―障害概念とカテゴリー診断の再検討.精神科治療学 23:145-154, 2008
4) 子安増生:岩波科学ライブラリー(73) 心の理論―心を読む心の科学.岩波書店,2000
5) Schopler E, Reichler RJ, Renner BR:The Childhood Autism Rating Scale(CARS).Irvington Publishers Inc, New York, 1986(佐々木正美 監訳:CARS―小児自閉症評価尺度.岩崎学術出版社,1989)
6) Schopler E, et al:佐々木正美,他 訳:自閉症の治療教育プログラム.ぶどう社,1985
7) 内山登紀夫:本当のTEACCH.学研,2006
8) Watson L, Lord C, Schaffer B, et al:Teaching Spontaneous Comunication to Autistic and Developmentally Handicapped Children. Irvington Publishers, Inc. New York, 1989(厚地友子,内山登紀夫,神尾陽子,他 訳:自閉症のコミュニケーション指導法―評価・指導手続きと発達の確認.岩崎学術出版社,1995)
9) Wing L:Asperger's syndrome:A clinical account. Psychol Med 11:115-129, 1981

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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