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研究と報告
脳実質内漏出性出血による精神障害の1剖検例
著者: 長友慶子1 笠新逸2 澤大介3 長野理恵3 鶴衛圭一4 石田康1 丸塚浩助5 井上輝彦6 三山吉夫6
所属機関: 1宮崎大学医学部臨床神経科学講座精神医学分野 2誠和会和田病院脳神経外科 3宮崎大学医学部生殖発達医学講座小児科学分野 4一誠会都城新生病院精神科 5宮崎大学医学部附属病院病理部 6大悟病院老年期精神疾患センター
ページ範囲:P.879 - P.884
文献購入ページに移動50歳の男性。31歳時に左膝蓋骨骨折で手術を受けた以外に特記すべき既往はない。死亡する2.5年前から倦怠感を主訴とする心気傾向がみられ,死亡前の2年間,ストレス障害,遷延性抑うつ状態の診断で抗うつ薬,抗精神病薬による治療を受けていた。改善の傾向がみられず,突然死した。剖検で,後腹膜腔に原因不明の大量出血があり,死因は出血性ショックであった。脳重量は1,330g。髄液は透明で脳の外表に出血や血腫はみられないが,前頭葉に軽度の脳萎縮を認めた。組織学的には,限局性髄膜炎を伴う脳軟膜の肥厚と脳実質内の血管周囲にヘモジデリンを貧喰したマクロファージが前頭葉から側頭葉の皮質下白質にかけて多数みられ,漏出性脳内出血と診断した。この所見は陳旧性であり,生前の精神症状の臨床経過を裏づけるものと考察した。
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