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短報
統合失調症患者に対する自動車運転訓練を導入した認知リハビリテーションの効果研究
著者: 荒井宏文123 松井三枝13 米沢峰男4 住吉太幹34 倉知正佳23
所属機関: 1富山大学医学薬学研究部(医学)心理学教室 2富山大学医学薬学研究部(医学)精神科早期治療開発講座 3科学技術振興機構 4富山大学医学薬学研究部(医学)精神神経医学教室
ページ範囲:P.65 - P.69
文献購入ページに移動統合失調症患者に対して神経心理学的検査バッテリーを適用することにより,認知機能障害が疾患の基本的な特徴の1つであることが示されてきた6)。特に統合失調症患者においては,実行機能,言語記憶,注意,精神運動速度,および言語流暢性の障害があることが示されてきている6)。認知機能障害は症状寛解後も残り4),患者の社会適応を妨げる要因であることが指摘されている3)。このため,認知機能障害に直接的に焦点を当てた介入である認知リハビリテーションが必要と考えられる。しかし本邦ではそのような取り組みの報告は少ない。今後統合失調症患者の地域ケアを進めるため,本邦でも認知リハビリテーションの開発および効果研究が不可欠と考える。
本研究では,まず自動車運転訓練が日常生活と密着しており,患者への導入に際してのモチベーションとして有用である可能性に着目した。自動車運転は注意,知覚,判断および運動などさまざまな機能が関連することが考えられる。これまで,統合失調症患者の自動車運転に関する報告はあまりなかったが,最近,自動車運転シミュレーターを用い,統合失調症患者は健常者よりも運転スピードが遅いことやエラーが多いことを示した報告がある9)。高齢者や他の疾患における運転能力の評価と神経心理学的機能との関連を検討したいくつかの研究では,運転能力と実行機能との関連が報告されている1,2,8)。これらのことより,本研究では実行機能の改善を主に目指し自動車運転シミュレーターを用いた認知リハビリテーションプログラムを考案し,統合失調症患者へ試みたので,その成果を報告する。この際,運転能力の改善には適切な判断や見通しを立てる能力などの実行機能の改善が伴うだろうという予測を立てた。
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