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文献詳細

雑誌文献

精神医学51巻1号

2009年01月発行

文献概要

私のカルテから

認知症の焦燥性興奮は抑肝散で消退したが,下肢浮腫や低K血症を生じた後期高齢の2例

著者: 田島孝俊1 原田貴史1 鹿井博文1

所属機関: 1雁の巣病院

ページ範囲:P.93 - P.95

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はじめに

 認知症の周辺症状2)は,セロトニン,カテコルアミンやGABA神経などさまざまな神経系の異常によって引き起こされると示唆されている。抑肝散は,セロトニン神経系を中心に各神経系に働き正常化することで,ADL(activities of daily living)を低下させることなくBPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)を改善する2,3,7)ことが注目されている。最近我々は抑肝散を投与中に下肢浮腫を伴う軽度血圧上昇と低カリウム血症(低K血症)を示した後期高齢認知症2例を経験した。安全な抑肝散投与を行ううえで重要な経験と考え報告する。

参考文献

1) 荒井啓行,岩崎鋼,古川勝敏,他:レビー小体型認知症の治療―漢方方剤「抑肝散」の効果.精神医学 49:707-710, 2007
2) 藤原道弘,江頭伸昭,内田直樹:認知症の問題行動における漢方製剤の有用性―抑肝散の薬理を中心に.医薬ジャーナル 43:103-110, 2007
3) Iwasaki K, Satoh-Nakagawa T, Maruyama M, et al:A randomized, observer-blind, controlled trial of the traditional Chinese medicine Yi-gan san for improvement of behavioral and psychological symptoms and activities of daily living in dementia patients. J Clinical Psychiatry 66:248-252, 2005
4) 熊谷亮,松本紘平,多田裕子,他:抑肝散により偽アルドステロン症を生じたアルツハイマー病の1症例.精神医学 49:407-410, 2007
5) 森本靖彦,中島智子:甘草製剤による偽アルドステロン症のわが国における現状.和漢医薬学会誌 8:1-22, 1991
6) 柴田洋孝,伊藤裕:偽アルドステロン症の重症副作用への疾患別対応.日内会誌 96:805-810, 2007
7) Shinno H, Inami Y, Inagaki T, et al:Effect of Yi-Gan San on psychiatric symptoms and sleep structure at patients with behavioral and psychological symptoms of dementia. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry 32:881-885, 2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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