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特集 若年性認知症をめぐる諸問題
若年認知症の医療上の問題点
著者: 宮永和夫1
所属機関: 1南魚沼市立ゆきぐに大和病院
ページ範囲:P.953 - P.959
文献購入ページに移動はじめに
認知症の専門医は,日本老年精神医学会認定医が772人と日本認知症学会認定医が47人である(2009年7月現在)。当然両学会の認定を受けている人もいるため,総数は若干少なくなる。また,国立長寿医療センターの研修事業によって養成された全国の認知症サポーター医は600人弱存在すると報告されている。一方,厚生労働省によると,介護保険による介護度2以上の認知症者を推定して180~190万人としている(実際にはそれ以上存在すると考えられるが)。認知症サポート医も専門医に入れると,認知症専門医の総数は1,500人弱となるが,もし全国の認知症患者190万人を診ることになると,認知症専門医1人当たりの患者人数は1,200人以上となる。これは,実際のところ,困難を通り越して不可能な数字といえる。なお,NPO若年認知症サポートセンターが2004年度に調査した時点で,若年認知症の診断や治療が可能と回答のあったのは,全国で250か所ほどの医療機関だけであったことを付け加えておきたい。以下,医療上の問題点を総論と,診断と治療の各論に分けて論じてみたい。
認知症の専門医は,日本老年精神医学会認定医が772人と日本認知症学会認定医が47人である(2009年7月現在)。当然両学会の認定を受けている人もいるため,総数は若干少なくなる。また,国立長寿医療センターの研修事業によって養成された全国の認知症サポーター医は600人弱存在すると報告されている。一方,厚生労働省によると,介護保険による介護度2以上の認知症者を推定して180~190万人としている(実際にはそれ以上存在すると考えられるが)。認知症サポート医も専門医に入れると,認知症専門医の総数は1,500人弱となるが,もし全国の認知症患者190万人を診ることになると,認知症専門医1人当たりの患者人数は1,200人以上となる。これは,実際のところ,困難を通り越して不可能な数字といえる。なお,NPO若年認知症サポートセンターが2004年度に調査した時点で,若年認知症の診断や治療が可能と回答のあったのは,全国で250か所ほどの医療機関だけであったことを付け加えておきたい。以下,医療上の問題点を総論と,診断と治療の各論に分けて論じてみたい。
参考文献
1) Elan, Wyeth Stop Trial Using the Highest Dose of Alzheimer's Drug, Published on Thursday 02 April 2009 (http:en.alzheimer-360.com/)
2) 若年認知症家族会 編:若年認知症―本人・家族が紡ぐ7つの物語.中央法規出版,2006
3) 厚生労働省:医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成九年三月二十七日厚生省令第二十八号),1997
4) 宮永和夫:若年認知症の臨床.新興医学出版,2007
5) 宮永和夫:ターミナルケアの判断は誰が,いつ行うのか.訪問看護と介護 12:728-737,2007
6) 宮永和夫:若年認知症とうつ病.精神科 11:6-13,2008
7) 宮永和夫:若年認知症患者の地域ケアにおける現状と課題.公衆衛生 73:422-428,2009
8) 宮永和夫:タウオパチーの治療と介護.Clin Neurosci 27:335-340, 2009
9) 宮永和夫:認知症と就労.訪問看護と介護 14:206-212,2009
10) 楯林義孝:うつとMCI.朝田隆 編著,軽度認知症害.中外医学社,pp244-250,2007
11) Trojanowski JQ, Duff K, Fillit H, et al:New directions for frontotemporal dementia drug discovery. Alzheimers Dement 4:89-93, 2008
12) Wood RL, Fussey I:Cognitive Rehabilitation in Perspective. Taylor & Francis, UK, 1990(清水一,千島亮,原寛美,他 訳:認知障害のリハビリテーション.医歯薬出版,pp238-265,1998)
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