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雑誌目次

論文

精神医学51巻12号

2009年12月発行

雑誌目次

巻頭言

医療観察法の将来像

著者: 松原三郎

ページ範囲:P.1144 - P.1145

 「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(以下,医療観察法)」は,2005年7月15日から施行され,今年で4年を経過した。2008年12月末日までに1,330件の申し立てが行われ,審判の結果は,入院決定60%,通院決定19%,不処遇決定18%,却下3%である。また,12月末現在で通院処遇となった対象者は450人で,このうち,直接通院235人,入院からの移行通院215人,処遇終了66人,再入院4人である。

 法の第1条(目的)にあるように,「その病状の改善及び同様の行為の再発の防止を図る」という点では,過去4年間に数名の対象者が傷害事件を起こしているが,これまでの措置入院で認められたように2年以内に40%近くが再入院してきた状況と比較すると,その効果は目を見張るものがある。医療観察法は確かに「病状の改善と再犯の防止」に大きな成果を上げている。それでは,医療観察法は,わが国の精神医療と司法体系の中で確固たる地位を得たといえるのだろうか? 実際には多くの課題が積み残されたままであり,根本的な問題も含めて再検討すべき部分が多いと感じている。

研究と報告

アルツハイマー病に対する高用量donepezilの1年間の治療効果

著者: 野澤宗央 ,   一宮洋介 ,   野澤詠子 ,   杉山秀樹 ,   村山憲男 ,   井関栄三 ,   新井平伊

ページ範囲:P.1147 - P.1154

抄録

 高度アルツハイマー病の認知機能障害に対しdonepezil 10mgがわが国においても認可されたが,副作用の問題や長期間の治療効果に対する懸念もあり,使用を避けている場合も少なくない。今回,我々はdonepezil 5mgを服用していた軽度から高度のアルツハイマー病患者に対し,donepezil 10mgへ増量した際の効果と副作用について,アポリポ蛋白E遺伝子型との関連を含めて検討した。その結果,donepezil 10mgの内服により24週間以上の期間,認知機能障害の進行抑制が可能であると考えられた。52週後より次第に認知機能障害が進行することが示唆されたが,5mg内服継続より進行抑制に対し効果があると考えられた。また,認知機能障害の比較的軽度群のほうが高度群よりdonepezil 10mgの有効性が高いと考えられ,早期に適応が拡大される必要性が示唆された。アポリポ蛋白E遺伝子ε4の存在は,donepezil 10mgの治療効果に影響しないと考えられた。

就労支援事業が就労につながった全般性社交不安障害(回避性パーソナリティ障害)の2症例

著者: 永田利彦 ,   村上澄子 ,   熊谷幸市 ,   山田恒 ,   吉村知穂 ,   中島豪紀 ,   切池信夫

ページ範囲:P.1157 - P.1163

抄録

 我々の想像以上に,比較的年齢が高い人が,社会からひきこもった状態にある可能性が指摘されており,それらのケースに対するアプローチが課題となりつつある。今回,全般性の社交不安障害と回避性パーソナリティ障害を併存する2症例に対し,まずセロトニン再取り込み阻害薬による薬物療法を行いつつ,行動の変化を促した。ある程度の変化が生じた後には,就労支援事業に主体的に参加し,就労に至った。ひきこもりの精神科診断名はさまざまであるが,回避性パーソナリティ障害を併存する症例でも全般性の社交不安障害と診断されること,この全般性の社交不安障害に対して薬物療法が有効であるが,効果が得られるには時間を要すること,実際に社会に適応するにはきめ細かい対応が必要なことを論じた。

レビー小体型認知症の周辺症状における高用量塩酸ドネペジルの有用性

著者: 眞鍋雄太 ,   小阪憲司

ページ範囲:P.1165 - P.1172

抄録

 変性性認知症患者の介護困難をもたらす一番の要因は,攻撃性および易怒性の亢進,あるいは介護への抵抗や暴力といった,周辺症状(BPSD)である。我々は,CDLBガイドライン改訂版(consortium on dementia with Lewy bodies guideline-revised)によりレビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies;DLB)と診断し,すでに塩酸ドネペジル5mg/日が投与されている症例で,易怒・興奮,暴言・暴力などのBPSDが再燃したために入院することとなった6症例に対し,塩酸ドネペジルを10mg/日投与し,その効果を検討した。全例で評価期間内に興奮や易刺激性だけでなく,その他のNPI(neuropsychological inventry)の各評価項目でも改善を認めた。有害事象は認められなかった。

精神機能のための簡易客観指標

著者: 臺弘 ,   三宅由子 ,   斎藤治 ,   丹羽真一

ページ範囲:P.1173 - P.1184

抄録

 精神保健の基軸の1つである生活療法には,医療者,患者,関係者を通じて共有される精神機能の客観的指標があることが望まれる。臺は診療と自立支援の現場の10余年の経験から,使用しやすい簡易指標の1組を作り上げて,その内容は本誌に第1~3報として順次報告した。それは具体的でわかりやすい貴重な情報を与えてくれるものであったが,さらに複雑な課題を将来に提示することにもなった。本論文は全望を総括する意味で企図されたが,その間に本指標をUBOMと命名した丹羽が,普及を目的とするNPO法人の研究会を組織し,共著者として参加してくれたのは心強いことであった。従来からの経緯で,総括論文も統合失調症に重点が置かれているものの,筆者は自閉性スペクトラム障害や性格障害などの広い視点からも,本指標が活用され検討を受けることを期待している。

抑うつ傾向を有する高齢者の脳機能および心理的特徴―バウムテストを含めた検討

著者: 村山憲男 ,   井関栄三 ,   藤城弘樹 ,   長嶋紀一 ,   新井平伊 ,   佐藤潔

ページ範囲:P.1187 - P.1195

抄録

 抑うつ傾向を有する高齢者の脳機能と心理的特徴を検討した。65歳以上の健常高齢者32名に対し,脳画像検査の他,GDS短縮版,WMS-R,WAIS-Ⅲ,バウムテストなどを実施した。GDS短縮版が5点以下を統制群,6点以上を抑うつ群とした。その結果,脳18F-FDG PETで抑うつ群は左前頭葉,左側頭・頭頂連合野に有意傾向の糖代謝低下が認められた。WMS-Rでは両群に有意差は認められず,WAIS-Ⅲでは抑うつ群の動作性IQが有意に低かった。バウムテストでは,抑うつ群は樹冠が有意傾向ながら低く使用された領域数が有意に少なかったことから,消極的・萎縮的な態度や不安などが強い傾向が示唆された。

精神科における広汎性発達障害日本自閉症協会評定尺度(PARS)思春期・成人期尺度の有用性についての予備的検討

著者: 安田由華 ,   橋本亮太 ,   大井一高 ,   福本素由己 ,   高村明孝 ,   毛利育子 ,   谷池雅子 ,   武田雅俊

ページ範囲:P.1197 - P.1203

抄録

 広汎性発達障害(pervasive developmental disorder;PDD)の診断補助ツールとして,広汎性発達障害日本自閉症協会評定尺度(PDD-Autism Society Japan Rating Scale;PARS)が開発された。我々は初めて,開発時とは別の集団を用いて,PARS思春期・成人期尺度の疾患鑑別能力について追試した。対象は精神科で問題となりやすい,幼児期には問題が顕在化せず,平均16歳で初めて精神科を受診したPDD19名と,その他の精神疾患27名である。その結果,精神科日常臨床において,PARS短縮版の現在評定のみで,非常に簡便にPDDを鑑別できる可能性が示唆された。

短報

統合失調症患者に認められた無症候性アルコール性小脳変性症の1剖検例

著者: 藤城弘樹 ,   土谷邦秋 ,   横田修 ,   湯浅和美 ,   新里和弘 ,   新井哲明 ,   秋山治彦

ページ範囲:P.1205 - P.1208

はじめに

 アルコール過剰摂取に関連した中枢神経系病変とそれに基づく精神神経障害には,Wernicke脳症,アルコール性神経障害,橋中心髄鞘崩壊,Marchiafava-Bignami症候群,ペラグラ脳症,アルコール性小脳変性症などがある。アルコール性小脳変性症は,Victorらの膨大な研究9)以来,臨床神経病理学的に一疾患単位として概念が確立されてきた。しかし,わが国においては,アルコール性小脳変性症の報告例は少なく,特に神経病理学的記載のある剖検例の報告はまれである1~4,6,7,10,11)

 今回我々は,大量の飲酒歴のある統合失調症患者の剖検例において,神経病理学的にアルコール性小脳変性症として矛盾のない小脳変性病変を認めたにもかかわらず,生前に神経症状が明らかではなかった1例を経験した。これまでの本邦からの無症候性のアルコール性小脳変性症の剖検例は,Yokotaらの3例のみであり10,11),臨床経過を含めた報告はみられず,当症例は貴重であると考えられたのでここに報告する。

Aripiprazoleにより遅発性ジストニアを来した1例

著者: 高見浩 ,   今中章弘 ,   大森信忠

ページ範囲:P.1209 - P.1212

はじめに

 遅発性ジストニアは抗精神病薬などの長期投与によって生じる遅発性錐体外路症候群の1つで,持続性筋収縮により斜頸や体幹捻転,姿勢異常などを来す不随意運動である11)。発生頻度は1~2%とまれではあるが,主観的不快度は高く,歩行にも支障を来すなど日常生活に著しい苦痛を伴うことも多い1,11)。難治性で予後不良とされ,発症予防が最も重要といわれており11),薬剤使用にあたっては注意を要する。原因薬剤として高力価抗精神病薬が多いとされるが,低力価や非定型抗精神病薬による報告例も散見される1,9)

 Aripiprazoleは既存の抗精神病薬にはないドパミンD2受容体部分アゴニスト作用を主たる薬理作用とした抗精神病薬であり4),錐体外路系副作用が少なく長期維持療法に有用とされる7)。医学雑誌を検索した限り,本邦においてaripiprazoleにより遅発性ジストニアを生じた報告例はない。今回筆者らは,aripipazole開始5か月後にジストニアを生じた統合失調症例を経験したので報告する。なお個人情報保護のため,症例の細部には若干の変更を加えている。

認知行動療法がレジリアンスを強化したと考えられた統合失調症の1症例

著者: 森清 ,   高橋義人 ,   北川信樹 ,   山本晋 ,   野口真紀子 ,   安田素次

ページ範囲:P.1213 - P.1216

はじめに

 近年,統合失調症の治療目標として,症状の改善のみならず,寛解・回復・再発予防について活発に論じられるようになっている。再発を繰り返すことで,治療経過や予後に悪影響を及ぼすことはすでに周知であり,再発予防のための維持療法の重要性に異論を挟む余地はないであろう。統合失調症の再発モデルとして,生物学的要因と心理社会的要因との相互作用により再発のリスクが左右されるという考え方である「ストレス脆弱性モデル」が広く提唱されているが13),近年,回復の見地に立ち,統合失調症を理解する視点も必要との立場から,Richardsonは「レジリアンスモデル」を提唱している11)。レジリアンスの定義は研究者によって差異はあるものの,危険因子を排除するだけでは疾病の予防あるいは良好な経過を導くことに限界があり,それと対立する因子を増強させる治療的アプローチも考慮する必要性があるという考え方が基本となっているといえるだろう。統合失調症の再発予防においても,生物学的脆弱性を補い,心理環境面のストレスへ対処するための方策として,レジリアンスを強化するような精神療法的アプローチが期待される。

 その精神療法的アプローチの1つとして,近年では,心理教育や生活技能訓練(SST)などの認知行動療法の活用が注目されている1,12)。さらに1990年代英国を中心に,統合失調症の主たる症状である幻覚妄想体験に焦点化した認知行動療法的アプローチが行われるようになり2,9),わが国でも,原田らの貢献によりその効果が立証されつつある4,5,7,8)。今回我々は,断薬により再燃を繰り返し,数回の入院歴のある統合失調症患者の1例に対して,幻覚妄想体験に焦点化したアプローチを組み入れた包括的な認知行動療法を行った。この認知行動療法的アプローチが,異常体験の軽減に寄与し,地域支援センターへの通所に結びついただけではなく,症状増悪の際に自ら適切な対処行動をとることで入院を回避できた。その症例を報告し,レジリアンス概念を踏まえて,再発予防の観点から本症例を考察したい。なお,個人情報保護のため,症例の細部には変更を及ぼした。

薬剤性パーキンソニズムに対して抗パーキンソン病薬とtandospironeの併用が奏効した統合失調症の1例

著者: 根本清貴 ,   池田八郎 ,   朝田隆

ページ範囲:P.1217 - P.1220

はじめに

 薬剤性パーキンソニズムは,非定型抗精神病薬の普及によってその頻度は減少したものの,抗精神病薬を内服している統合失調症患者にとって負担となる症状である。これまでの研究において,薬剤性パーキンソニズムがある患者はそれがない患者よりも内服を自己中断することが高いことが知られている8)

 今回,我々は,薬剤性パーキンソニズムを呈する統合失調症患者に対して抗コリン薬に加えて5-HT1Aagonistであるtandospironeを併用したところ,パーキンソン症状が軽快した1例を経験した。Tandospironeによる抗パーキンソン作用は,あまり注目されていないことに加え,薬剤性パーキンソニズムに対してtandospironeが奏効した報告は今までにないことから,ここに若干の考察を加え報告する。

追悼

土居健郎先生と私

著者: 中井久夫

ページ範囲:P.1222 - P.1225

 私には「偲ぶ」という言葉がまだしっくりこない。ここ10年,主に私のほうの健康上の理由で,学会からも遠ざかっていたからであろうが,お会いしたことも,お姿を拝見したことも少ない。ただ,頻繁な文通があったから,手紙が今しばらく途絶えているな,という感じである。東京に行きさえすればお会いできるという感じもある。偲ぶ会に出席すれば,少しはけじめがつくだろう。しかし,天の配慮か否か,偲ぶ会には眼の手術の前日で行けなくなった。私の生命が続くしばらくの間は,先生と私との間はこれまでとあんまり変わらないような気がする。

書評

―西村晋二 著―成人発達障害者の就労をめぐって この子がなぜ障害者なの―『育つ環境』と『働く環境』の間のギャップ

著者: 臺弘

ページ範囲:P.1226 - P.1226

 近頃の治療報告には,症例検討より集団統計のほうが尊ばれる。ただし,生活障害のからむ細やかな配慮を要する場合には,個人に即した詳しい報告を欠かせない。本書の著者は障害者の就労支援についてのわが国の草分けの人物で,評者とは精神障害回復者の自立支援を通じて30年来の仲間である。彼は73歳となったが,なお篤志者として現場の側に立つ。

 昨年,彼から分厚い原稿が届いた。軽く覗いたのでは主旨がわからない。彼の説明によると,これは当時世話をしていた娘さんAの物語で,私がまず障害の解説がほしいと頼んだら,現場の実況がそれを示すという。他の出版社からも原稿に加筆するよう求められたが応じなかったそうである。その頑固さはいかにも彼らしいが,本は広く読まれてこそ価値がある。幸い,若干の加筆の後に出版の運びがかなって,私にも推薦の言葉が求められた。書評を書くことができたのは嬉しい次第である。

―加藤 敏,八木剛平 編著―レジリアンス―現代精神医学の新しいパラダイム

著者: 鈴木國文

ページ範囲:P.1227 - P.1227

 『レジリアンス―現代精神医学の新しいパラダイム』と題された本書は,「レジリアンス」という我々精神科医にとってあまりなじみのない概念をめぐり,加藤敏,八木剛平という斯界のオピニオン・リーダー2人が編んだ入門の書である。編者の他に,精神病理学と生物学的精神医学の双方から11人の著者が筆を執っている。

 私は「新しいパラダイム」といったことが謳われている書物をあまり信用しない。科学哲学者Kuhnがいう意味で真に刷新されたパラダイムなどが1人の科学者の思考史の中に現れることなど,まずないからである。「新しいパラダイム」と謳われる事柄のほとんどが,その科学者がそれまで信じてきた「科学」の有効範囲の限定に過ぎない。では,本書もそうなのだろうか…。本書の2人の編者は,近代医学のあり方には精神障害のある部分を見逃す構造が本質的にあることを,ずっと指摘し続けてきた論者である。近代医学のこの限界に関し,「レジリアンス」という視点を得て,新たにその本質に迫ろうとする本書は,確かに「新しいパラダイム」を志向した書といっていいだろう。しかし,「新たなパラダイム」に乗ることの難しさは,参加した執筆者の幾人かが得た印象でもあったのではないだろうか。

―田島 治,江口重幸 監訳,冬樹純子 訳―ヒーリー精神科薬物療法ガイド(第5版)

著者: 岩佐博人

ページ範囲:P.1228 - P.1228

 現代の精神医学の臨床において,薬物療法は不可欠かつ重要な治療手段であることは疑う余地がないだろう。これまでにも多くの精神科薬物療法に関するテキストが刊行されているが,本書もそうしたカテゴリーの著作である。内容は,主要な病態とその治療に関連する薬剤について神経生物学的基盤と臨床適応の両面から論述されているが,「副作用」という側面からも積極的な議論が展開され,現代の精神科薬物療法をめぐる複合的な課題が浮き彫りにされている。

 原題「Psychiatric Drugs Explained」のとおり,著者の豊富な経験や綿密な文献的考察を含めたていねいな論説は,各薬剤を臨床で実際に処方する際にも有益な示唆に富んでいる。しかし,本書は一般の精神薬理学の書物とニュアンスを異にしている。それは狭義の医学的論述にとどまらず,薬物療法を取り巻く社会的背景や医薬品マーケティングに関連する問題など,学術書ではあまり着目されることがない視点からも検討が加えられている点である。そうした意味では,他に類書をみないかもしれない。趨勢を極める薬物療法の背景に潜む多様な要因に対して批判的論説を試みながら,精神医学における薬物療法の意味をとらえ直そうとするスタンスが明確に読み取れる。たとえば,薬剤の効果を論ずる際に,化学的メッセージと心理学的メッセージの意味を混同して解釈することへの危惧や,病像の改善の評価は薬物の効果だけでなく,本来人間に備わっている自然対処能力についても留意すべきであるという提言など,薬物治療の意義と限界について再考を促す指摘も少なくない。また,SSRIなどの「抗うつ薬」の適用頻度の拡大と自殺率との関連についての議論など,日本でも社会的なレベルでの問題となっている自殺死亡率の増加との関連を考えるうえでも重要な意味を持っている。

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編集後記

著者:

ページ範囲:P.1232 - P.1232

 民主党政権になり,教育や医療に風穴が開いたように感じられる。同党が主張する医師・看護師などの増員,医療機関の入院による診療報酬の増額,障害者自立支援法の廃止が実現すれば,精神科医療もずいぶんやりやすくなるかもしれない。医学部定員を1.5倍にしても教員数が変わらなければ現場の負担だけが増えるといった批判は確かにあるが。新政権のもと医療観察法がどうなるのかについては,同党のマニフェストには記載がないようなのではっきりしない。法成立の過程では,政府案は安易な精神鑑定,刑事施設での精神医療の不備,地域における精神保健福祉体制の未整備などの問題を抱え,かえって精神障害者への差別・偏見を助長する危険性があるとして反対していた。その後の動きはわからないが,本誌「巻頭言」で松原先生が指摘されているような問題点を議論する絶好の機会かもしれない。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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