icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学51巻12号

2009年12月発行

文献概要

研究と報告

就労支援事業が就労につながった全般性社交不安障害(回避性パーソナリティ障害)の2症例

著者: 永田利彦1 村上澄子2 熊谷幸市3 山田恒1 吉村知穂1 中島豪紀1 切池信夫1

所属機関: 1大阪市立大学大学院医学研究科神経精神医学 2前・大阪市地域就労支援センター(現・ハローワークプラザ難波) 3大阪市地域就労支援センター

ページ範囲:P.1157 - P.1163

文献購入ページに移動
抄録

 我々の想像以上に,比較的年齢が高い人が,社会からひきこもった状態にある可能性が指摘されており,それらのケースに対するアプローチが課題となりつつある。今回,全般性の社交不安障害と回避性パーソナリティ障害を併存する2症例に対し,まずセロトニン再取り込み阻害薬による薬物療法を行いつつ,行動の変化を促した。ある程度の変化が生じた後には,就労支援事業に主体的に参加し,就労に至った。ひきこもりの精神科診断名はさまざまであるが,回避性パーソナリティ障害を併存する症例でも全般性の社交不安障害と診断されること,この全般性の社交不安障害に対して薬物療法が有効であるが,効果が得られるには時間を要すること,実際に社会に適応するにはきめ細かい対応が必要なことを論じた。

参考文献

1) Liebowitz MR, Gorman JM, Fyer AJ, et al:Social phobia. Review of a neglected anxiety disorder. Arch Gen Psychiatry 42:729-736, 1985
2) Muller JE, Koen L, Stein DJ:The spectrum of social anxiety disorders. In:Bandelow B, Stein DJ ed. Social Anxiety Disorder. Marcel Dekker, New York, pp19-34, 2004
3) 永田利彦,宮脇大,大嶋淳,他:治験広告によって来院した社会不安障害例.精神医学 45:709-714,2003
4) 永田利彦,大嶋淳,和田彰,他:社会不安障害に対する薬物療法―古典的対人恐怖,ひきこもりとの関連.精神医学 46:933-939,2004
5) 永田利彦:社交不安障害の病態の多様性と鑑別.治療学 42:745-748,2008
6) 高塚雄介:ひきこもりの状態にある若年者の心理―東京都「若者の自立支援に関する調査研究」から見えてきたもの.心と社会 39:110-118,2008
7) 東京都青少年・治安対策本部:平成19年度若年者自立支援調査研究報告書「実態調査からみるひきこもる若者のこころ」.2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?