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文献詳細

雑誌文献

精神医学51巻12号

2009年12月発行

短報

Aripiprazoleにより遅発性ジストニアを来した1例

著者: 高見浩12 今中章弘1 大森信忠1

所属機関: 1独立行政法人国立病院機構 賀茂精神医療センター 2現・和恒会ふたば病院

ページ範囲:P.1209 - P.1212

文献概要

はじめに

 遅発性ジストニアは抗精神病薬などの長期投与によって生じる遅発性錐体外路症候群の1つで,持続性筋収縮により斜頸や体幹捻転,姿勢異常などを来す不随意運動である11)。発生頻度は1~2%とまれではあるが,主観的不快度は高く,歩行にも支障を来すなど日常生活に著しい苦痛を伴うことも多い1,11)。難治性で予後不良とされ,発症予防が最も重要といわれており11),薬剤使用にあたっては注意を要する。原因薬剤として高力価抗精神病薬が多いとされるが,低力価や非定型抗精神病薬による報告例も散見される1,9)

 Aripiprazoleは既存の抗精神病薬にはないドパミンD2受容体部分アゴニスト作用を主たる薬理作用とした抗精神病薬であり4),錐体外路系副作用が少なく長期維持療法に有用とされる7)。医学雑誌を検索した限り,本邦においてaripiprazoleにより遅発性ジストニアを生じた報告例はない。今回筆者らは,aripipazole開始5か月後にジストニアを生じた統合失調症例を経験したので報告する。なお個人情報保護のため,症例の細部には若干の変更を加えている。

参考文献

1) Adityanjee, Aderibigbe YA, Jampala VC, et al:The current status of tardive dystonia. Biol Psychiatry 45:715-730, 1999
2) Burke RE, Fahn S, Jankovic J, et al:Tardive dystonia:Late-onset and persistent dystonia caused by antipsychotic drugs. Neurology 32:1335-1346, 1982
3) 梶龍兒,佐藤健太,佐光亘,他:ジストニアの診断と治療―病態生理的アプローチ.臨床神経 48:844-847,2008
4) 菊地哲朗:Aripiprazoleは第3世代抗精神病薬と言えるか.臨精薬理 11:1077-1088,2008
5) Lim HK, Pae CU, Lee C, et al:Tardive dystonic symptoms associated with aripiprazole treatment. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry 32:589-590, 2008
6) Oommen E, Chand PK, Sharma PS:Aripiprazole-induced tardive dystonia. Prim Care Companion J Clin Psychiatry 8:378-379, 2006
7) 大森哲郎,三浦貞則,山下格,他:統合失調症に対するaripiprazole長期投与の有効性と安全性の検討―後期臨床第Ⅱ相試験からの継続投与.臨精薬理 9:453-474,2006
8) Pinninti NR, Mago R, Adityanjee:Tardive dystonia-associated prescription of aripiprazole. J Neuropsychiatry Clin Neurosci 18:426-427,2006
9) Skidmore F, Reich SG:Tardive dystonia. Curr Treat Options Neurol 7:231-236, 2005
10) 田中輝明,長尾智美,久住一郎,他:遅発性ジストニアに対してclozapineが著効した統合失調症の1例.臨精薬理 8:1979-1983,2005
11) 融道男:遅発性錐体外路症候群の治療―遅発性ジストニアの治療を中心に.精神医学 44:934-947,2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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