文献詳細
書評
―加藤 敏,八木剛平 編著―レジリアンス―現代精神医学の新しいパラダイム フリーアクセス
著者: 鈴木國文1
所属機関: 1名古屋大学医学部保健学科
ページ範囲:P.1227 - P.1227
文献概要
私は「新しいパラダイム」といったことが謳われている書物をあまり信用しない。科学哲学者Kuhnがいう意味で真に刷新されたパラダイムなどが1人の科学者の思考史の中に現れることなど,まずないからである。「新しいパラダイム」と謳われる事柄のほとんどが,その科学者がそれまで信じてきた「科学」の有効範囲の限定に過ぎない。では,本書もそうなのだろうか…。本書の2人の編者は,近代医学のあり方には精神障害のある部分を見逃す構造が本質的にあることを,ずっと指摘し続けてきた論者である。近代医学のこの限界に関し,「レジリアンス」という視点を得て,新たにその本質に迫ろうとする本書は,確かに「新しいパラダイム」を志向した書といっていいだろう。しかし,「新たなパラダイム」に乗ることの難しさは,参加した執筆者の幾人かが得た印象でもあったのではないだろうか。
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