精神医学51巻2号

2009年02月発行

私のカルテから

我々精神科医は社会不安障害を見落としていないか

著者： 義村勝¹

所属機関： ¹ストレスケア義村クリニック

ページ範囲：P.147 - P.149

はじめに

　社会不安障害は，米国では無視された不安障害⁶⁾とも呼ばれるほど症状はあっても受診することの少ない疾患の1つであり，本邦においてもその状況はさほど変わらないと思われる。その理由は，本人自身が精神保健上の問題というより非常に内気だと理解している⁴⁾，また恥ずかしさや恐れから症状を口にしない⁸⁾などといわれる。

　筆者のクリニックに初診した患者の中に過去に精神科を受診したが社会不安障害の診断が十分になされず，従って患者の抱える症状の深刻さに応じた治療がなされていないと感ずる症例がいくつかみられた。患者の側が受診しないだけでなく，我々精神科医も十分な診断ができていない側面があるのではないかと考えた。以下，症例を呈示して考察する。なお症例については，個人が特定されないよう改変を加えた。

参考文献

1) Acarturk C, de Graaf R, van Straten A, et al：Social phobia and number of social fears, and their association with comorbidity, health-related quality of life and help seeking：A population-based study. Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol 43：273-279, 2008

2) 朝倉聡，井上誠士郎，佐々木史，他：Liebowitz Social Anxiety Scale(LSAS)日本語版の信頼性および妥当性の検討．精神医学 44：1077-1084, 2002

3) 上島国利，小山司：社会不安障害(Social Anxiety Disorder)の治療における進歩．臨精薬理 5：433-447, 2002

4) Kessler RC：The impairments caused by social phobia in the general population：Implications for intervention. Acta Psychiatr Scand 108：19-27, 2003

5) Liebowitz MR：Social phobia. Mod Probl Pharmacopsychiat 22：141-173, 1987

6) Liebowitz MR：Update on the diagnosis and treatment of social anxiety disorder. J Clin Psychiatry 60：22-26, 1999

7) Ruscio AM, Brown TA, Chiu WT, et al：Social fears and social phobia in the USA：Results from the National Comorbidity Survey Replication. Psychol Med 38：15-28, 2008

8) Schneier FR：Social Anxiety Disorder. N Engl J Med 355：1029-1036, 2006

9) 島悟，鹿野達男，北村俊則：新しい抑うつ性自己評価尺度について．精神医学 27：717-723, 1985