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文献詳細

雑誌文献

精神医学51巻4号

2009年04月発行

文献概要

シンポジウム うつ病と自殺に医師はどう対応するのか―医師臨床研修並びに生涯研修における精神科の役割

うつ病・自殺対策への取り組み

著者: 関健1

所属機関: 1城西医療財団

ページ範囲:P.347 - P.354

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はじめに

 わが国においては,1998年に年間の自殺者数が3万人を超えてから2007年まで10年連続して3万人以上が続いており,座視できない状況にある。厚生労働省(以下,厚労省)および国はうつ病・自殺対策として表1のような施策を行ってきた。

 「自殺対策基本法」の成立を受けて厚労省は,2007年度11.61億円を,2008年度15.52億円を自殺対策の推進費用として予算化し,「うつ病の早期発見・治療の推進のため,うつ病などについての普及啓発活動を実施するとともに,相談・治療体制の整備を推進するため,かかりつけ医や心理職などを対象とした専門的な研修を実施する。また,うつ病の病態解明や診断・治療法,うつ病患者の社会復帰のためのプログラムなどに関する研究開発を推進する」などの施策を講じている。こうした施策の背景には,自殺企図者の75%に精神障害があり,その約半数がうつ病などで,うつ病患者は急増しているが,4人に3人は医療機関で治療を受けていないといった現状認識がある(図1)。これに呼応して,日本医師会(以下,日医)も一般科医師のうつ病に対する診療能力向上のための研修会を2007年度より都道府県医師会単位で開催するようになり,所要の講習会修了者には,2008年4月の診療報酬改定で,うつ病診療へのインセンティブが与えられることとなった。

 本シンポジウムは,精神科七者懇談会(日本精神神経学会,精神医学講座担当者会議,日本精神科病院協会,日本総合病院精神医学会,独立法人国立精神医療施設長協議会,全国自治体病院協議会,日本精神神経科診療所協会,以下,七者懇)として取り組むべきうつ病・自殺対策につき,①医師臨床研修における研修医のうつ病診療能力向上,②安全衛生法のメンタルヘルス対策における産業医のうつ病診療能力向上,③生涯研修としての一般科医のうつ病診療能力向上,などについてそれぞれの立場から論じることとしたい。この稿では,問題提起として現状を概観し,問題点を抽出したい。

参考文献

1) 朝田隆:大学病院一般科で働く医師たちによる精神科研修評価.精神誌 109:1057-1060, 2007
2) 小島卓也:新医師臨床研修制度における精神科必修化とその影響について.日精協誌 21(11):1101-1104, 2002
3) 小島卓也,関健:新医師卒後研修について―七者懇談会卒後研修問題委員会の立場から.精神医学 48:939-946, 2006
4) 厚生労働省:平成14年労働者健康状況調査の概況.2003
5) 厚生労働省:職場における自殺予防と対応 改定第1版―一般医療機関におけるうつ状態・うつ病の早期発見とその対応.中央労働災害防止協会,2007
6) 水木泰:精神科臨床研修の検証―日精協病院でのアンケート調査の結果から.精神誌 109:1052-1056, 2007
7) 中嶋義文:初期研修医は精神科研修に何をもとめるか―七者懇卒後研修問題委員会による新医師卒後臨床研修制度第一期修了者に対するアンケートより.精神誌 109:1061-1066, 2007
8) 中根允文:研修医への精神医学教育の重要性を訴える理由.日精協誌 21:1097-1100, 2002
9) 西島英利 監修:自殺予防マニュアル 第2版―地域医療を担う医師へのうつ状態・うつ病の早期発見と対応の指針.日本医師会,2008
10) 関健:精神科必修化への経緯と今後の課題.日精協誌 21:1126-1132, 2002
11) 関健:短期研修でできることって? 精神科 6:365-373, 2005
12) 関健:医師臨床研修制度のエポック.日精協誌 25(6):615-622, 2006
13) 関健:メンタルヘルス活動と精神科医療―産業医(精神科医)の立場から.日精協誌 25:821-828, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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