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シンポジウム うつ病と自殺に医師はどう対応するのか―医師臨床研修並びに生涯研修における精神科の役割
精神科臨床研修で学んだこと
著者: 牧野祐子1
所属機関: 1順天堂大学糖尿病代謝内分泌内科
ページ範囲:P.365 - P.371
文献購入ページに移動はじめに
精神科が必修となった背景には,臨床研修の必修化に伴い,今後どのような専門分野に行こうとも,一般診療において遭遇する精神科的病態に適切に対応できるような診察能力が社会的に求められているということがある(表1)。つまりそれまでは,「精神科のことはよくわからないので,精神科を受診させればよい」という姿勢で,ある意味精神科に任せっぱなしのところがあったと思われるが,日常の診療では精神科の患者が,内科疾患や外科疾患に罹患することは珍しくなく,逆に内科疾患がきっかけで精神的に加療が必要な状態になることも頻繁にあり,他科の医師であっても精神症状の見極めや,治療の必要性を判断する力が求められる。
実際,臨床研修を行ってみると,精神疾患と診断されておらずとも,精神的なサポートを必要とされている患者は非常に多いと感じた。
たとえば,筆者の担当したある膠原病内科で治療中の患者は,長い闘病生活のうえに,うつや不安を訴えていたが,入院中に解離状態となり意識消失したため,初めてこれを目撃した内科の看護師などスタッフは騒然となったが,実は,自宅では何度も同様の症状を繰り返しているというエピソードがあった。患者は15分ほど体を硬直させ開眼したまま質問には答えなかったが,その後何もなかったかのように開眼し動き始めた。この当時筆者は研修医になって2か月目であり,確かに解離状態については教科書では勉強したものの,実際に見たのは初めてで,非常に動揺し,患者がどのような状態であるかを考える余裕がなかった。患者を身体(臓器)の視点だけでなく心理,社会的視点を加えて統合的に診ていく力をつけることも研修の目的である。そこで,筆者が経験した研修がこのような目的に沿うものであったか検討したい。
精神科が必修となった背景には,臨床研修の必修化に伴い,今後どのような専門分野に行こうとも,一般診療において遭遇する精神科的病態に適切に対応できるような診察能力が社会的に求められているということがある(表1)。つまりそれまでは,「精神科のことはよくわからないので,精神科を受診させればよい」という姿勢で,ある意味精神科に任せっぱなしのところがあったと思われるが,日常の診療では精神科の患者が,内科疾患や外科疾患に罹患することは珍しくなく,逆に内科疾患がきっかけで精神的に加療が必要な状態になることも頻繁にあり,他科の医師であっても精神症状の見極めや,治療の必要性を判断する力が求められる。
実際,臨床研修を行ってみると,精神疾患と診断されておらずとも,精神的なサポートを必要とされている患者は非常に多いと感じた。
たとえば,筆者の担当したある膠原病内科で治療中の患者は,長い闘病生活のうえに,うつや不安を訴えていたが,入院中に解離状態となり意識消失したため,初めてこれを目撃した内科の看護師などスタッフは騒然となったが,実は,自宅では何度も同様の症状を繰り返しているというエピソードがあった。患者は15分ほど体を硬直させ開眼したまま質問には答えなかったが,その後何もなかったかのように開眼し動き始めた。この当時筆者は研修医になって2か月目であり,確かに解離状態については教科書では勉強したものの,実際に見たのは初めてで,非常に動揺し,患者がどのような状態であるかを考える余裕がなかった。患者を身体(臓器)の視点だけでなく心理,社会的視点を加えて統合的に診ていく力をつけることも研修の目的である。そこで,筆者が経験した研修がこのような目的に沿うものであったか検討したい。
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