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文献詳細

雑誌文献

精神医学51巻4号

2009年04月発行

シンポジウム うつ病と自殺に医師はどう対応するのか―医師臨床研修並びに生涯研修における精神科の役割

うつ病と自殺―市民の認識

著者: 南砂1

所属機関: 1読売新聞東京本社

ページ範囲:P.387 - P.394

文献概要

日本の自殺対策,現状とあゆみ―自殺者3万人超連続10年の現況をどうするか

 日本の年間自殺死亡者が3万人を超えたのは,一挙に8,000人あまり増加した1998年からだが,その後,さまざまな取り組みや国を挙げての対策が講じられるようになってからも事態は改善せず,自殺死亡者数は「高止まり」の状況を続け,2007年,とうとう10年連続3万人超という状況に至った。

 この間,2000年には「健康日本21」の策定に際して自殺志望者数の減少目標が示され,2002年には厚生労働省(以下,厚労省)に設けられた自殺防止対策有識者懇談会が,包括的な自殺防止活動の実施を提唱した。それに基づいて調査研究や相談体制が整備され,地域保健,産業保健などの観点からうつ対策や職場のメンタルヘルス対策が講じられてきた。しかし,自殺者の減少にはつながらなかったばかりか,精神保健領域を中心とする対策に批判的意見も聞かれるようになった。うつ対策は個人の疾病対策の色彩が濃く,自殺する個人に偏ったものであるという批判である。自殺対策にはむしろ,自殺者個人を取り巻く周囲および社会全体を視野に入れた総合的な対策が必要である,というものである。うつ病は確かに自殺に直接関係する重大な要因ではあろうが,個人がうつ病に至るのも,またうつを病んだ患者が自殺に至るのも,さまざまな要因が重なり合ってのことであり,その全体を視野に入れた対策を急ぐ必要がある,というのはその通りであろう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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