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雑誌目次

論文

精神医学51巻5号

2009年05月発行

雑誌目次

巻頭言

広汎性発達障害概念の功罪

著者: 井原裕

ページ範囲:P.416 - P.417

 私は,児童精神医学の専門家ではないが,中学生以上の高機能広汎性発達障害(PDD)は自分で診ている。実際,このところ,「自分はアスペルガーではないか」と言って受診する若者がふえた。すでに他の医療機関でアスペルガー障害の診断が下されている場合もある。

 専門家に依頼しない理由は,第一に,したくてもできないからである。頼めば,「予約待ち半年」などの返事が返る。思春期を迎えた患者は,焦燥を秘め,衝動性が亢進し,自己破壊傾向もある。とても半年も待てない。早めに治療関係を作って,SOSを受信できる状況を設定しなければならない。

研究と報告

孔脳症にアルツハイマー型認知症が合併し,幻視・幻聴を認めた1症例

著者: 野澤宗央 ,   井関栄三 ,   野澤詠子 ,   村山憲男 ,   一宮洋介 ,   新井平伊

ページ範囲:P.419 - P.424

抄録

 近年,さまざまな認知症を来す疾患が知られており,臨床現場で鑑別困難な症例も少なくない。今回我々は,アルツハイマー型認知症が疑われ,合併する孔脳症が原因と考えられる幻視・幻聴を呈した症例を経験した。認知機能障害と幻覚症状の関連の有無が検討され,鑑別疾患としてレビー小体型認知症が考えられたが,否定するには至らなかった。認知症に伴う精神症状の薬物療法は,高齢者が多いこともあり副作用が問題となるが,今回幻覚症状に対しaripiprazoleを使用したところ,大きな副作用なく改善した。今後,レビー小体型認知症など錐体外路症状の悪化を来しやすい症例の幻覚症状に対しても,使用する価値があると考えられた。

セルトラリン投与により遅発性ジスキネジアが出現した老年期うつ病の1例

著者: 倉増亜紀 ,   植田勇人 ,   宇城敏秀 ,   宇田川充隆 ,   石田康

ページ範囲:P.425 - P.429

抄録

 老年期うつ病に対しフルボキサミン内服と修正型電気けいれん療法を行っていたが容易に再発し,寛解期が短くなったため,主剤をセルトラリンに変更した。セルトラリンの投与開始後しばらくは抑うつ症状は落ち着いており,副作用もなく経過していた。セルトラリン投与を開始し4か月後より遅発性ジスキネジアと思われる口唇・舌の不随意運動を生じたため,主剤を再びフルボキサミンに変更したところ,口部ジスキネジアは速やかに消失した。

社会・経済的要因を抱えた自殺のハイリスク者に対する精神保健的支援の可能性―心理学的剖検研究における「借金自殺」事例の分析

著者: 勝又陽太郎 ,   松本俊彦 ,   高橋祥友 ,   川上憲人 ,   渡邉直樹 ,   平山正実 ,   木谷雅彦 ,   竹島正

ページ範囲:P.431 - P.440

抄録

 本研究は,1998年以降わが国において増加したとされる社会・経済的要因を背景とした自殺,とりわけ負債を抱えた自殺事例に焦点を当て,心理学的剖検による情報収集で得られた事例に関して探索的な考察を行い,具体的な支援対策の可能性についても検討を行った。そのうえで,自殺の背景に存在する社会・経済的要因に対して,精神保健的観点を含めた専門的支援の連携モデルの構築に寄与する,心理学的剖検データの活用可能性について検討を行った。

妊娠中に発症し,パロキセチンが奏効したパニック障害の1例―妊娠中の精神障害への薬物療法に関するweighing of risks

著者: 岡島美朗 ,   日野原圭 ,   上野直子 ,   薄井里英

ページ範囲:P.443 - P.449

抄録

 パニック障害は妊娠中に症状が軽減すると考えられてきたが,近年その影響はさまざまであるとされる。我々は妊娠中にパニック障害を発症し,パロキセチンによる治療で良好な転帰を得た症例の経過と,治療方針の決定過程を提示した。治療経過中に,妊婦に対するパロキセチン投与は避けるべきだとの勧告が出されたが,諸々の状況を考慮して同剤の投与を継続した。向精神薬の胎児への影響は知見が十分蓄積されておらず,新たな情報がもたらされる可能性もあるため,妊娠中あるいは妊娠の可能性のある患者の治療にあたっては,十分な情報収集とともに,催奇形性だけでなくさまざまな条件を勘案した総合的・倫理的な判断が重要と考えられる。

短報

Zolpidemにより幻覚を呈したと思われる1症例

著者: 今井必生 ,   北村登 ,   松石邦隆 ,   松井裕介 ,   田宮聡 ,   三田達雄

ページ範囲:P.451 - P.454

序言

 超短時間作用型非ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤であるzolpidem(マイスリー®)はω1受容体に対する選択的作用のため,ふらつき,筋弛緩作用などの副作用が少ない11)。Zolpidem服用後の幻覚症状発現が海外を中心に報告されているが1~3,5,6,8~10,12,14),国内での詳細報告は2例のみで5,8),国内外で幻聴を呈した症例の報告は1件9)しかない。今回,我々は,zolpidem服用後に幻視と幻聴を来した若年女性の1症例を経験したので報告する。また,過去の症例および本症例の臨床的背景をまとめ,zolpidemによる幻覚の発症要因を考察する。

Aripiprazoleの追加投与が有効であった難治性非定型うつ病患者の1例

著者: 山本暢朋 ,   稲田俊也

ページ範囲:P.457 - P.460

はじめに

 薬物療法はうつ病の主要な治療手段であるが,完全寛解にまで至らない症例は稀ではなく,多くの薬物療法の結果を総合すると,30~45%の患者では全く効果がみられないか,部分的改善しかみられないとされている1)。抗うつ薬による薬物療法を十分な量で十分な期間行った場合,抗うつ薬以外の薬物を追加投与する効果増強療法(augmentation therapy)が行われる場合があり,lithiumなどの気分安定薬や甲状腺ホルモン製剤などが用いられている。今回,我々は難治性うつ病患者にaripiprazoleを追加投与して有効であった症例を経験したため,若干の文献的考察を加えてこれを報告する。

甲状腺機能亢進症状ともやもや病の合併により生じた右前頭葉の出血性梗塞後に緊張病症状を呈した1例

著者: 川村友美 ,   渡辺健一郎 ,   地引逸亀

ページ範囲:P.461 - P.464

はじめに

 緊張病症状は統合失調症や気分障害などの機能性精神病で認められるが,器質性の原因によっても出現する。こうした器質性緊張病の症例は,緊張病症状発現のメカニズムを理解する手がかりとなる。今回我々は,右前頭葉の出血性梗塞後に緊張病性興奮を呈した1例を経験したので報告する。出血性梗塞の発生には,まれとされる甲状腺機能亢進症状ともやもや病の合併が関与していた。

多系統萎縮症を合併した大うつ病性障害に対して,tandospironeが有用であった1症例

著者: 久馬透 ,   高橋淳 ,   山田尚登 ,   青木建亮

ページ範囲:P.465 - P.468

はじめに

 Tandospironeは不安,抑うつ,焦燥などに効果を有する5-HT1A受容体作動薬であり3),その副作用の少なさからベンゾジアゼピン系抗不安薬に代わる薬剤として期待されている。また,軽症から中等症のうつ病に対する効果も報告されている4,5)

 今回我々は,大うつ病性障害の経過中に多系統萎縮症を発病した患者にtandospironeを投与し,神経症状を悪化することなく精神症状に十分な効果を挙げることができたので報告する。

前頭側頭葉変性症の精神症状に対する抑肝散の使用経験

著者: 石川智久 ,   小森憲治郎 ,   福原竜治 ,   樫林哲雄 ,   清水秀明 ,   谷向知

ページ範囲:P.469 - P.472

はじめに

 近年,認知症患者の精神症状・行動異常の治療薬として,抗精神病薬に比べて錐体外路症状・過鎮静などの副作用が少ない漢方方剤が注目されている。神経症患者にみられる焦燥感や易怒性,不眠症などの治療に用いられる抑肝散(TJ-54)は,代表的な認知症性疾患であるアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症患者の精神症状・行動異常に対して有用であるとの報告がある5)。しかし,特有の精神症状・行動異常を呈する前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration;FTLD)に対する抑肝散の効果については,これまでほとんど報告されていない。

 今回我々は,FTLDのサブタイプである意味性認知症(semantic dementia;SD)患者2例を対象に,抑肝散の有用性について日本語版精神症状評価尺度(Neuropsychiatric Inventory;NPI)を用いて検討した。

依存症が併存した双極性障害―気分安定薬でギャンブル依存,買い物依存が改善された2例

著者: 岩橋和彦 ,   深間内文彦

ページ範囲:P.473 - P.477

はじめに

 米精神医学会が出しているDSM-IV以降,DSM-III時代に存在した感情障害(affective disorder)の名称〔ICD-10では気分(感情)障害〕が気分障害(mood disorder)に統一された2,10)。そしてAkiskalは双極性障害を失調感情障害や抗うつ薬による躁転,薬物・アルコール依存を含めてI型からIV型まで分類した(bipolar spectrum;双極スペクトラム)1)

 この双極性障害は診断が困難で,極性診断変更は稀ではなく,単極性うつ病患者の約1割が数年にわたる経過観察中に双極IまたはII型に移行しているという報告もある9)。さらに,単極性のうつ病と双極性のうつ病では治療に用いる第一選択薬が異なるうえに,双極性障害に抗うつ薬を投与して躁転したり症状が不安定化する可能性が高いため,診断には慎重を期し,経過観察も注意深く行う必要がある。

 昨今では「依存」あるいは「乱用」という用語がよく使われるが,精神医学的にいう依存症は,その対象を大きく分けると「行為(あるいは習慣)」である場合と「物」である場合がある4)。前者はギャンブル依存症や買い物依存などであり,後者はアルコール依存症や薬物依存症である。さらに,この「行為」における依存を過程への依存(ギャンブル依存症,ネット依存症など)と人間関係への依存(共依存,恋愛依存症など)に区別する考え方もある。ギャンブル依存症は,DSM-IVの「pathological gambling:病的賭博(312.31)」に対照して,ICD-10では「habit and impulse disorders:習慣および衝動の障害」のうちの「pathological gambling:病的賭博 F63.0」として,賭博をしたいという衝動を抑制することが困難で,意思の力では止められず,本人を悩ませたり,日常生活の仕事を妨げるにもかかわらず続けられるといった症状として定義されているものにあてはまる8)。買い物依存の場合,衝動的な買い物行動がエスカレートして百万円単位の借金をしたり,破産状態に陥ってもなおその行動が収まらないことをいい,欧米の文献では「compuslive buying」と名づけられていることから姉尾の論文では「脅迫的買い物癖」という表現が使われている3)

 DSM-IV以来,双極性障害の診断にcomorbidityが本格的に容認され,さらにAkiskalが提唱する双極スペクトラムで,双極性障害に抗うつ薬による躁転のみならず,薬物・アルコール依存,摂食障害,パニック障害などの精神神経疾患や人格障害が共存し得ることが示されている1)。このような状況下で,極性診断変更歴のある双極性障害の男女で,それぞれギャンブル依存および買い物依存という「依存症状」が共存した症例を提示し,その経過および治療について報告し考察したい。

資料

精神科医以外の医師に行ったうつ病治療のアンケート調査

著者: 大村慶子 ,   天野直二

ページ範囲:P.479 - P.484

はじめに

 うつ病はさまざまな身体症状を伴うことが多く,精神科以外の診療科を受診することが多いといわれ,うつ病患者の44.8%が,内科などのプライマリ・ケア医を受診していたという報告2)があるが,プライマリ・ケア医を受診したうつ病患者の30~50%が見逃されているという報告5)もある。うつ病の専門医による診断と,実際治療に携わっている内科医の臨床診断との一致率は19.3%という報告4)があり,診断の一致率は非常に低いが,「うつ病・うつ状態」と診断されて精神科に紹介されてくる患者の中には,SSRI,SNRIなどの抗うつ薬がすでに処方されている患者がある。現在,うつ病・うつ状態の診療を精神科医以外が行う機会が増えているが,その実際についての調査はほとんど見当たらない。精神科医がうつ病診療で果たす役割を検討するためにも,その実際を知ることは必要であると考えられたため,精神科医以外の医師が行っているうつ病・うつ状態診療の調査を行った。

古典紹介

E. Esquirol:Des hallucinations(1817)【第1回】

著者: 濱中淑彦 ,   高林功

ページ範囲:P.487 - P.497

幻覚論

 ある人物がある感覚sensationを実際に知覚しているという内的確信を持ち,その時この感覚を引き起こす適当な外的対象が彼の諸感官sensの射程内に存在しない場合,この人物は幻覚状態état d'hallucinationにある:これが幻視者visionnaireである。

 ソヴァージュ[F. Boissier de]Sauvages[1763]は,諸感官に損傷があって,その損傷以前に知覚していたようには,もはやさまざまな感覚を知覚できない人の種々の誤謬に,hallucinationの名称を与えた。この疾病分類学者によって,見間違えberlue,重なって見えることbévue,耳鳴りtintoinは,狂気foliesという綱classeの最初の目ordreに位置づけられた。しかしこの場合,その他の感官や推論raisonnementによって,このような錯覚illusions,誤謬を訂正することは可能であるので,こうした諸現象はデリールdélireと混同してはならないとしている。

私のカルテから

電気けいれん療法にて植毛部に熱傷を負った1例

著者: 荒木一方

ページ範囲:P.499 - P.501

はじめに

 電気けいれん療法(以下,ECTと記す)を行ったところ,頭髪の植毛部に火傷の発生を来した例を経験した。国内および海外にて同種の事例はこれまで発表されていないようであり,今後の診療に教訓となる事例でもあると考えたため,報告する。なお,症例の匿名性に配慮して若干の改変を加えた部分がある。

口腔ケア中に咽頭癌が発見された精神科療養病棟入院中のアルコール関連認知症の2症例

著者: 村田浩 ,   原田貴史 ,   熊谷雅之

ページ範囲:P.503 - P.505

 最近我々は,口腔ケア目的で歯科受診した療養病棟のアルコール関連認知症2例で咽頭癌を経験した。

書評

―白倉克之,丸山勝也 編―アルコール医療ケース・スタディ

著者: 齋藤利和

ページ範囲:P.507 - P.507

 アルコール医療に携わって35年が過ぎた。35年前,多くの精神病院は「アル中」という名の処遇困難例で,市中の内科には肝機能障害という病名をつけられた「アル中」であふれていた。アルコール依存症の治療と取り組もうとしたとき,当時勤めていた病院の院長から「アル中は直らないよ」とやさしい忠告を受けたものだ。「アル中が直らない」というのは間違いだという声がやっと上がってきた頃である。国立療養所久里浜病院は,当時アルコール依存症の治療システムを持っている数少ない医療機関だった。私も教えを求めて,久里浜を訪れた1人だった。3か月の入院期間,集団療法,行軍,患者自治会,合併症治療など目を開かれた思いだった。1970年代後半から久里浜病院で医師のみならずコメディカルのアルコール依存症治療の研修が始まった。そのこともあって,いわゆる「久里浜方式」はその後全国に広まり,各地でさまざまな展開をみている。そして,現在,独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センターも進化し続けている。

 本書は前院長である白倉先生,現院長である丸山先生の編になるものである。著者の多くも久里浜アルコール症センターに関係している人々,同センターが中心になって組織された厚生労働省の班研究にかかわった人々である。こうしたことから,本書は本邦のアルコール症医療の今日的な集大成といっても過言ではないだろう。読んでみて,まず,アルコール性障害がかくも多岐にわたるのかと改めて思った。アルコールは全身のありとあらゆる臓器に分布するので,脳,肝臓のみならず,ほとんどすべての臓器障害が引き起こされる。しかも,たとえば,肝障害は認知の障害や離脱症状の出現とも関係しているように,それぞれの障害は互いに関連性,共通の病理を持っている。したがって,アルコール性障害にかかわる医療従事者はその専門性を越えて広い知識や経験を要求される。だから,アルコール性障害として数多くの疾患・障害が平易でわかりやすく紹介されている本書は,臨床家にとっては大いに役立つことが期待される。本書はまず,アルコール依存症とその関連疾患をめぐって(白倉),アルコール依存症診断における基礎事項(真栄里,樋口),アルコール依存症と遺伝子(原田),アルコール関連疾患診断における基礎事項(宮川),アルコール関連疾患の今後の見通し(丸山)という項によってアルコール性障害の大きな枠組みが平易な言葉で紹介されている。他の項はほとんどすべてが「基礎知識」,「症例の提示」,「症例の解説」の順で展開されている。そこには多くの症例が提示されており,その適切な解説ともあいまって病態を生き生きイメージできるようになっている。また,豊富に使われている図・表,写真が理解をさらに深くしてくれる。著者のほとんどが豊かな経験を持った実践家でなければ,こうした「生きた著述」はできなかったであろう。

―長瀬修,東俊裕,川島聡 編―障害者の権利条約と日本―概要と展望

著者: 伊藤哲寛

ページ範囲:P.508 - P.508

 2006年に国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」が2008年に発効した。

 本書は条約制定に直接的,間接的にかかわってきた当事者,実務家,研修者による共著である。条約制定までの経緯とその到達点が,日本政府の功罪相半ばする役割も含めて,詳しく論じられている。通常の解説書とはひと味違う思想の書でもあり,読みごたえがある。

―融 道男 著―向精神薬マニュアル(第3版)

著者: 倉知正佳

ページ範囲:P.509 - P.509

精神科薬物療法のエキスパート養成本

 このたび,第2版から7年の歳月を経て,向精神薬マニュアル第3版が出版された。本書は,そのタイトルにふさわしく,個々の向精神薬の特徴,使い方,副作用が詳しく説明されているだけでなく,薬剤の作用機序,副作用の発生機序などが,精神薬理学に深い造詣を有する著者ならではの明快さで説明されている。薬物療法については,症例報告も丁寧に紹介されているので,臨場感をもって読むことができる。

 第1章抗精神病薬では,A. 抗精神病薬開発の歴史に続いて,B. 統合失調症の神経伝達物質仮説という新しい表題で脳画像研究が追加され,グルタミン酸仮説関係が前の版より詳しくなっている。C. 抗精神病薬の種類と特徴では,特に非定型抗精神病薬について,その選び方やせん妄に対する治療を含めて詳しく記述され,ドパミンD2受容体パーシャルアゴニストの明確な定義も述べられている。D. 抗精神病薬の使い方は,非常に実際的・具体的で,E. 抗精神病薬の副作用では,副作用の“症候学”,その発生機序,そして,治療法が具体的に述べられている。

―古川壽亮 日本語版監修・解説―Beck & Beckの認知行動療法ライブセッション

著者: 井上和臣

ページ範囲:P.510 - P.510

百聞は一見にしかず。Beck & Beckに学ぶ認知行動療法

 この出版物は,認知療法の創始者Aaron T. Beck, M.D.(以下,Dr. Beck)とその娘Judith Beck, Ph. D.(以下,Judith)が登場するDVDと,DVDの面接全文(英語)とともに日本語版を監修した古川壽亮氏による解説が掲載されたBookから成る。

 DVDビデオ2枚組からDisc2を取り出し,パソコンに挿入する。『Aaron T. Beck1絶望感-初回面接』を再生する。画面の乱れが落ち着くと,Dr. Beckと女性患者が現れる。

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編集後記

著者:

ページ範囲:P.514 - P.514

 今回の5月号では久しぶりに「古典紹介」としてE. Esquirol(仏)による「Des hallucinations」(1817)というフランス語の古典が濱中淑彦・高林 功先生により紹介されている。あまりにも長いので5月号と6月号との2回に分けて掲載されることになり,今回は論文の前半の6症例の提示までの翻訳である。6月号では論文の後半の7症例目の紹介と全体の考察の翻訳と濱中先生による解説が掲載される予定である。最初の投稿原稿では濱中先生の解説が詳細でずいぶん長かったので,編集委員会で検討し,濱中先生に無理を言って短縮していただいた次第である。著名なEsquirolの時代,すなわち1810年代の幻覚についての考え方を知ることができ,とても参考になる。

 最近の若い精神科医はあまり古典を読まないとよく言われるが,若い精神科医に限らずベテランの精神科医にとってもフランス語の古典を読むことは,その分野を専門にする人は別として,ほとんどないと思われる。そういう意味でも,この種の古典紹介は非常にありがたい。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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