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雑誌目次

雑誌文献

精神医学51巻7号

2009年07月発行

雑誌目次

巻頭言

日本人はなぜ自殺するのか?

著者: 北山修

ページ範囲:P.620 - P.621

 これは最近,精神科医の間では一番の話題だろう。あるに違いない統計学的問題について私はよく知らないが,「日本人の自殺傾向」は,間違いなく日本人の生き方と文化的な問題をはらんでいるはずである。

 人は文化によって異なるところがある。文化を意味するカルチャーが,養殖や培養を意味し,人間を育む媒体を指すように,人間の生き方や悩み方,そして「病み方」も,この文化によって育てられ,決定されているところが大いにある。それゆえ,当然のごとくわが国では,この日本文化の特徴や他文化との差異を強く意識した精神医学や精神分析学が「日本人の洞察」を生み出し,それが内外で広く受容され評価されてきた。そして私の立場も1人の精神分析家としてその流れの中にあり,これから述べる「見るなの禁止」の観点から,自殺者の物語を30年にわたり考えてきた。

特集 精神疾患と睡眠マネージメント―最新の知見

Sleep Psychiatryを考える

著者: 井上雄一 ,   飯森眞喜雄

ページ範囲:P.623 - P.623

 1960~70年代においては,うつ病のレム潜時短縮仮説と,統合失調症の幻覚がレム睡眠構造の覚醒状態への侵入(intrusion)であるとの仮説が重要視され,精神疾患での睡眠研究の花形であった。しかし,前者は,これを説明する傍証が得られず(現在でも中枢コリン系機能の感受性亢進との関係で論じられることがあるが),かつうつ病態の中核的な部分を説明できないこと,後者は肯定的な所見が多くは得られなかったことから,1980年代以降は研究の前線から姿を消した。その後には,かつてのような精神科主導ではなく,より総合的な睡眠障害研究が進められ,精神疾患での睡眠障害は,頻度は高いが非特異的な存在としてあまり重視されなくなっていた。

 しかし,睡眠障害国際診断分類第2版((ICSD 2nd)2005年出版)による疾病概念整理の時期と前後して,特に慢性不眠がうつ病の重要な発症もしくは再発リスク要因になること,代表的な内科系睡眠障害である睡眠時無呼吸症候群がうつ病と因果関係が深いことが,主に疫学的な検討により明らかにされた。また,新世代抗精神病薬での睡眠改善効果とその臨床上の意義が明確化されたこと,睡眠時に限局したパニック発作の存在が注目されるようになったこと,認知症性疾患の中で重要な位置を占めるレビー小体病が,発症初期からレム睡眠時に異常行動を呈することが明らかになったことなども,精神疾患研究における睡眠生理学研究の重要性を再認識させるきっかけとなっているし,精神疾患治療薬使用による睡眠中の意識障害下での異常行動も,司法睡眠医学領域での課題となっている。

統合失調症と睡眠障害

著者: 内村直尚 ,   小鳥居望

ページ範囲:P.625 - P.632

はじめに

 統合失調症の発病や再発に際しては,ほとんどの症例において睡眠障害がみられる。ところで,睡眠ポリグラフ(PSG)検査を用いた睡眠障害に関する報告は必ずしも一致していないものの,入眠潜時の延長,睡眠の維持障害,徐波睡眠の減少,浅睡眠の増加,レム睡眠潜時の短縮などがみられる1,2,10,14)。しかし,統合失調症でも急性期か慢性期かによって所見も異なるため,状態像を明確に把握したうえでPSG検査を行うことが重要である。また,最近統合失調症の治療には非定型抗精神病薬が使用されることが多いが,これら薬剤の睡眠への影響も明らかにはされていない。そこで我々は,統合失調症の未治療患者の急性期における睡眠障害の特徴および非定型抗精神病薬であるリスペリドン液(RIS-OS)の睡眠に及ぼす影響について検討した。

うつ病における併存不眠の治療管理

著者: 三島和夫

ページ範囲:P.635 - P.647

はじめに

 DSMやICDではうつ病(気分障害,大うつ病)の診断項目の1つに不眠が挙げられている。不眠がうつ症状の1つに過ぎないとすれば,うつ病の発症とともに出現し,寛解や治癒とともに消失するはずである。しかし,現実は異なる。うつ病でみられる不眠の多くは難治性であり,うつ病の寛解後も高率に残遺する。うつ病の臨床経過の中で寛解と再燃に伴う抗うつ薬の増減はあれども,睡眠薬は寛解時にも減量できずに年余にわたり服用を続けるケースは稀ではない。これを睡眠薬の常用量依存と片付けるのはきわめて早計であり,うつ病における睡眠問題の本質を見誤っている。うつ病患者でしばしばみられる慢性不眠は単なるうつ症状の1つではなく,うつ病の臨床経過と乖離して持続する実にやっかいな併存症であるため,睡眠薬が中止できないケースがきわめて多いのである。また,うつ病患者の不眠の原因は,うつ病に起因するもの,併存症としての不眠症のみならず,睡眠時呼吸障害,薬剤起因性によるものなど多岐にわたり治療法も異なるが,実地臨床で適切な診断と対処がなされているとは言い難い(図1)。本項では,うつ病の病態生理,診断や治療を考えるうえで不眠症をどのようにとらえるべきか,最近の考え方を紹介する。

不安障害と睡眠

著者: 中村真樹 ,   井上雄一

ページ範囲:P.649 - P.657

はじめに

 DSM-IV-TR(アメリカ精神医学会 編)における不安障害の下位分類の中で,睡眠障害関連の症状が診断基準に含められているものは,全般性不安障害(GAD;generalized anxiety disorder),急性ストレス障害(ASD;acute stress disorder),外傷後ストレス障害(PTSD;post-traumatic stress disorder)の3つである。具体的には,GADでは「睡眠障害(入眠または睡眠維持の困難,または落ち着かず熟眠感のない睡眠)」,ASDでは「強い不安症状または覚醒亢進(例:睡眠障害)」,PTSDでは「(外傷以前には存在していなかった)持続的な覚醒亢進症状」の下位項目として「入眠,または睡眠維持の困難」が挙げられている。

 一方,1990年に出版された睡眠障害国際分類第1版(ICSD-1)32)では,「身体疾患・精神障害と関連する睡眠障害」の下位項目として「睡眠障害を伴う不安障害」が取り上げられていたが,2005年に第2版(ICSD-2)2)に改訂され,他の疾患に起因する二次的な睡眠関連疾患は主病名にしないことになった。そのため,身体疾患や精神障害と関連する睡眠障害は,8つの睡眠障害大分類のカテゴリーからは除外され,「付録B:睡眠障害の鑑別診断の際に出会うことが多い,その他の精神科障害と行動障害」に含まれている。この付録Bには,夜間睡眠中にパニック発作を認めることが少なくないパニック障害と,睡眠や夢に関連する症状がDSM-IV-TRの診断基準に含まれていることから,外傷後ストレス障害・急性ストレス障害・全般性不安障害が記載されている。

 本稿では,これらを中心に,各不安障害に認められる睡眠障害の特徴に触れたい。特に,パニック障害に関しては,夜間のみにパニック発作を認める睡眠時パニックについて,鑑別診断を含め,近年の知見を紹介する。

レム睡眠行動障害

著者: 井上雄一

ページ範囲:P.659 - P.668

はじめに

 睡眠時随伴症の中で,高齢者に好発するレム睡眠行動障害(REM sleep behavior disorder;RBD)は,夢体験中に生じる暴力的な行動のために,ベッドパートナーもしくは患者自身が受傷しやすいという横断面での症状レベルの問題とともに,α-synucleiopathyに属する神経変性疾患に発展する可能性を含んでおり,この予防を視野に入れた診断・治療の重要性が高まってきている。本病態の解明は,レム睡眠機構の理解にもつながるものであり,睡眠学にとっての大きな課題の1つであるといえよう。

精神疾患と睡眠時呼吸障害

著者: 山田尚登

ページ範囲:P.669 - P.673

はじめに

 多くの精神疾患において睡眠障害は診断的に重要な臨床症状であり,治療効果を判定するうえでも重要である。うつ病においては入眠困難,中途覚醒,早朝覚醒などを含む不眠に対して注目されてきたが,近年,不眠とは逆に日中の眠気とうつ病の関連性を示す多数のデータが蓄積している。特に,睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome;SAS)とうつ病の関連性が近年注目されている。一方,うつ病と並ぶ2大精神病の1つである統合失調症においても睡眠の障害は診断的に重要なばかりでなく,多くの症例で睡眠障害が症状悪化のトリガーになっていることを臨床的に経験している。ここでは,うつ病や統合失調症とSASとの関係に関して述べる。

睡眠薬と夜間異常行動

著者: 石郷岡純

ページ範囲:P.675 - P.679

はじめに

 現在,睡眠薬として使用されている薬物はほとんどがベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZ)である。かつてのバルビツール酸系睡眠薬の時代とは異なり,不眠治療はきわめて安全に行えるようになり,精神科医以外の医師にも広く使用される薬剤となった。BZの優れた薬効と安全性の高さからもたらされる高い有用性は,不眠症患者に対して,いくら強調してもしつくせないほどの大きな貢献を果たしてきた。しかし,安全性では定評のあるBZでも副作用が皆無ではなく,睡眠薬を上手に使用するには,その副作用を正確に把握しておくことがポイントである。

 ひとくちに睡眠薬による行動の障害といっても,その内容は多彩である。また,報告者の関心のあり方によって,類似の現象であっても記載方法がまちまちなので,その全貌を把握することは案外困難である。さらに,夜間に生じる行動の障害とはいっても,単純に睡眠薬の服用後であるという意味でしかないのか,睡眠や概日リズムと関連した現象であるのかも不明なものが多い。このように,十分に医学的な検討を行うには制限のある領域ではあるが,臨床家にとっては「睡眠薬服用後に起こる行動の障害」を包括的に概観しておくことによって,睡眠障害の治療を効果的に進めていくために有用な視点が提供されることも事実であろう。本稿では睡眠薬服用時にみられる夜間の異常行動について概観することとする。

資料

京都市の医療機関を対象とした摂食障害の実態調査

著者: 中井義勝 ,   浜垣誠司 ,   野間俊一 ,   高尾龍雄 ,   山下達久 ,   藤田光恵 ,   高木隆郎 ,   石川俊男

ページ範囲:P.681 - P.683

はじめに

 欧米では1980年をピークに摂食障害の患者数が減少している。しかし,日本では患者数はまだ増加を続けている3,4)。にもかかわらず,日本では摂食障害の治療施設および治療者が限られている2)

 さらに,摂食障害は身体面のみならず,精神面,行動面でも多様な症状を呈するため,精神科,心療内科,内科,小児科,婦人科など受診する診療科が多様である。そのため,摂食障害患者の多くはどの医療機関を受診してよいかわからず困っているのが現状である。そのため,治療ネットワークの確立が必要である2)

 京都市で摂食障害治療ネットワークを確立する予備調査として,京都市の医療機関を対象に摂食障害患者の受診状況を調査したところ,興味ある結果を得たので報告する。

私のカルテから

患者が主治医の態度に不満を表明し,指導医が介入するときに何が起こるか―治療的転機となる要件

著者: 大江美佐里 ,   加藤雄輔

ページ範囲:P.685 - P.687

はじめに

 精神療法で生じる変化については多くの著作があり,精神分析の分野では,村岡がターニングポイントとして論じている2)。分析的治療でなくとも,こうした転機が生じることは体験的に知られている。一方,卒後研修において指導医が精神療法的側面を指導することの重要性は高まっている1)が,指導の機微は,時折ケーススタディで述べられる程度(山下ら3))で,指導医による介入がテーマとなることは少ない。

 今回は,介入が治療的転機として効果を発揮するための条件,特に,入院患者が主治医の態度に対して不満を表明するという,一見治療関係上は困難に思われる局面が治療的な転機をとることについて論じる。なお,症例報告に際し,本人から発表の許可を口頭で得,症例の匿名性・倫理的側面にも十分配慮した。入院治療では,筆者のうち加藤が主治医,大江が指導医としてかかわった。

塩酸ドネペジルによる精神症状・行動障害の悪化が疑われた前頭側頭型認知症の1例

著者: 品川俊一郎 ,   中山和彦

ページ範囲:P.689 - P.691

はじめに

 前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia;FTD)は前頭葉と側頭葉の前方部に変性を有する認知症である8)。初老期に発症する変性性認知症としてはアルツハイマー病(AD)に次いで多いとされ,病初期から前頭葉機能の障害に伴う特徴的な精神症状や行動障害を呈し,介護者の負担が非常に大きい疾患である。今回我々は前医によりADと診断されて塩酸ドネペジルを投与されていたが,後にFTDであることが明らかとなり,塩酸ドネペジルの中止により精神症状・行動障害(BPSD)が改善した1例を経験した。そこで,FTDの薬物療法とアセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AchEI)との関連に関して若干の考察を加えて,ここに報告する。記載にあたり患者個人が特定されないように配慮し,症例理解が損なわれない範囲で内容の一部を改変した。

心因性失声症に解決志向型アプローチが有効であった1症例

著者: 正木大貴 ,   中富康仁 ,   土田英人 ,   福居顯二

ページ範囲:P.693 - P.695

はじめに

 発声に関する器官に原因となる器質的な異常を認めないにもかかわらず,発声ができない状態を機能性発声障害という。その中には発症や症状の経過に心因的な背景が関与しているであろうと推測されるものが多く,それを特に心因性失声症と呼ぶ。心因性失声症に関する報告は,精神科領域4~6)や耳鼻咽喉科7,8)からのものが散見されるが,あまり数は多くない。一方,解決志向型アプローチはブリーフセラピー1)の1つで,問題の原因を追求して解決を目指すのではなく,今の状態とは違ったより良い新しい状態を構築することを目指すものである1,3)。我々は今回,心因性失声症患者で,解決志向型アプローチが有効であった症例を経験したので報告する。

「精神医学」への手紙

塩酸ドネペジル服用患者に診られる白髪の黒髪化現象

著者: 堀口淳

ページ範囲:P.696 - P.696

 写真(図)の症例は,当科で治療中の86歳の女性アルツハイマー病患者である。2007年8月31日から塩酸ドネペジル(3mg/日)の試用開始後,同薬5mg/日のみを継続投与し,この間,他医からトリクロルメチアジド,塩酸ニカルジピン,シンバスタチン,バッファリン®が併用投与されている。家族が本人の白髪の黒髪化に気づいたのは2008年の春頃である。筆者は他の女性アルツハイマー病2例でも,同現象を確認している。

 塩酸ドネペジルはコリンエステレースの阻害薬である。アセチルコリン類似作用3)とコリンエステレースに対する抵抗性2)を有する薬物4)が,育毛や発毛促進,白斑用剤の主成分として商品応用されている3)。アセチルコリンの局所血管拡張作用や円形脱毛症の治療効果についてもすでに報告1)されている。筆者にはこれらの報告と今回の所見との関連を考察する能力はないが,アルツハイマー病研究の発展に寄与すれば幸いである。

動き

精神医学関連学会の最近の活動―国内学会関連(24)(第2回)

著者: 高橋清久

ページ範囲:P.697 - P.712

(第51巻6号608頁より続く)


 日本時間生物学会は,生物の周期現象に関する科学的研究を推進し,時間生物学の進歩発展を図ること,およびその成果を広め人類の健康と福祉に寄与することを目的として1995年に設立された学術団体である。会員の研究分野は,基礎生物学から臨床医学,農学,水産,生活科学など広範な分野に及び,学会の運営は選挙で選ばれた理事で構成される理事会(理事長:本間研一,北海道大学医学研究科長)で行われる。

 2008年度第15回学術大会は,富岡憲治理事(岡山大学)を大会長として岡山で開催された。今回の学会では,2日間で特別講演・シンポジウム(3セッション)・ワークショップが用意され,活発な討議が行われた。また,学術奨励賞は「基礎・科学」部門:小柳 悟氏(九州大学)に決定した。

「第4回日本統合失調症学会(同時開催第1回アジア統合失調症ワークショップ)」印象記

著者: 川嵜弘詔

ページ範囲:P.714 - P.715

 第4回統合失調症大会は,「統合失調症研究―基礎から臨床へ―」をメインテーマに,2009年1月30日(金),31日(土)の会期で,千里の丘にある大阪大学吹田キャンパスの大阪大学コンベンションセンターにおいて,大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室教授 武田雅俊理事を会長,同教室の岩瀬真生医師を事務局長として開催された。

 また,本大会においては,武田雅俊会長のもと,韓国,台湾,中国などアジア13か国より50名の統合失調症研究者を招き,「アジアにおける統合失調症研究の連携」を目的として,31日(土)午前中までの日本統合失調症学会に引き続き,同会場にて,31日(土)午後から2月1日(日)の終日,わが国で初めてのThe 1stAsian Workshop on Schizophrenia Research(第1回アジア統合失調症ワークショップ)も同時開催された。統合失調症研究についての,わが国を中心としたアジア各国への初めての働きかけとなった意義深い学会であった。アジア13か国から50名の招待参加者を迎えたというと,大変な試みである。事務局やプログラム委員会の努力は並大抵のものではなかったであろう。しかしその成果はすばらしいものであった。

書評

―加藤忠史 著―《脳科学ライブラリー1》脳と精神疾患

著者: 㓛刀浩

ページ範囲:P.716 - P.716

 加藤忠史先生が単独で執筆された著書は,本書を含め5冊になる。「双極性障害―躁うつ病の分子病理と治療戦略」(医学書院,1997年)は,加藤先生の研究対象疾患について臨床から研究まで網羅した名著であり,本書評欄でも拙文を掲載していただいた。双極性障害の著作にはほかに「躁うつ病とつきあう」(日本評論社,1997年,2008年改訂第二版)と最近の「双極性障害―躁うつ病への対処と治療」(ちくま新書,2009年)が出版されている。「こころだって,からだです」(日本評論社,2006年)は,最先端の脳科学的研究成果も盛り込みつつ,精神疾患全般についてわかりやすく書かれた啓蒙書である。今回の「脳と精神疾患」は,全7巻の脳科学ライブラリー(津本忠治 編集)の第1巻であり,より専門的な内容となっている。

 本書は,精神疾患の脳科学的進歩について,簡にして要を得た解説書である。全体で214頁とコンパクトであるが引用文献は550件に上り,いずれの文献も精神医学研究のマイルストーンとなるような選りすぐりのものだ。膨大な研究成果をよくここまで要領良くまとめたものだと脱帽するほかはない。日本人研究者による研究成果の紹介も多く,わが国の研究について知るのにも役立つ。対象疾患は統合失調症,うつ病,双極性障害,自閉症,AD/HD,不安障害,身体表現性障害と,主要な精神疾患を網羅している。最後に動物モデルについて概説した1章があり,精神疾患を動物で研究することの現状と問題点についての完璧な総説となっている。

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編集後記

著者:

ページ範囲:P.720 - P.720

 5月22日から神戸で始まるはずだった第105回日本精神神経学会が新型インフルエンザで中止となり,一時はどうなるのかと心配したが,そのまま神戸で8月21日から延期開催されることになった。小島卓也理事長と前田潔会長をはじめとする関係者のご尽力に感謝申し上げたい。

 医学の進歩は感染症との戦いでもあるが,今回の流行は医学を越えた“社会的大騒ぎ”の観があった。街の光景からマスク姿だけを切り取って強調したニュース画面を見るにつけ,目に見えないもの=“得体の知れないもの”に対する人々の恐怖心を改めて教えてくれたような気がする。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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